【全文】コロナ感染者への差別や中傷しないで 緊急メッセージ

【全文】コロナ感染者への差別や中傷しないで 緊急メッセージ
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新型コロナウイルスに感染した人への差別や中傷が後を絶たないことから、文部科学省は25日、子どもや教職員、それに地域住民に対し、差別につながる言動を行ったり同調したりしないよう呼びかける緊急のメッセージを出しました。その全文です。(以下、原文ママ)

児童生徒等や学生の皆さんへ

新型コロナウイルスが広がってから、皆さんは、学校はどうなるのだろう、この先どうなるだろうと、不安だったのではないでしょうか。新しい学期を迎えるに当たって、皆さんに伝えたいことがあります。

まず、感染症にかからないようにするには、いくつかの方法があります。すでに皆さんが取り組んでいるように、話をするときにはマスクをしたり、手を洗ったり、具合が悪い場合には学校を休んだりしてもらうことです。そして何より、健康的な生活を送ることが大切です。それでも、これまでも皆さんは風邪をひいたり、インフルエンザになったりしました。今はさらに新型コロナウイルスが課題になっています。

この三つは、症状がよく似ています。ですから、今後、皆さんの誰もがこうした症状を経験することがあるでしょう。具合が悪い人の中には、新型コロナウイルスに感染したと診断される人も身近な人の中から出るかもしれません。もちろん、それが友達だと分かったら自分は大丈夫かなと不安になることもあるでしょう。

新型コロナウイルスには誰もが感染する可能性があります。感染した人が悪いということではありません。学校やクラスの中で感染することは悪いことだという雰囲気ができてしまうと、新型コロナウイルスに感染したと疑われることをおそれて、具合が悪くなっても、その後は言いだしにくくなったり、病院に行くのが遅くなったりしてしまいます。そうすると、さらに皆さんの地域で感染が広がってしまうかもしれません。

感染した人や症状のある人を責めるのではなく、思いやりの気持ちを持ち、感染した人たちが早く治るよう励まし、治って戻ってきたときには温かく迎えてほしいと思います。もし、自分が感染したり症状があったりしたら、友達にはどうしてほしいかということを考えて行動してほしいと思います。すでに、感染した人達が心ない言葉をかけられたり、扱いをされたりしているという事例が起きています。こうしたことが皆さんの周りでも起きないように、皆さんにも協力してほしいのです。

また、高齢者や病気がちの人は、感染すると症状が重くなってしまう危険があります。自分は元気だから大丈夫ということではなく、そのような人たちに感染させることがないよう、思いやりの気持ちを持ってほしいと思います。

新型コロナウイルス感染症が広がり、皆さんの日々の生活は一変したと思います。以前のようには、友達と会いにくくなり、スポーツや文化に触れる機会も少なくなり、将来への不安やストレスを抱えている人も多いでしょう。

これまでも、私たち人間は、新型コロナウイルスのような新しい病気を経験してきました。そのたびに、世界中の研究者が病気の原因を探り、予防方法を見つけたり、薬の開発をしたりしてきました。そうして、私たちは、病気と共存していく。この歴史は繰り返されています。新型コロナウイルスも研究が進んで解明されれば、予防と治療ができるようになり、新たな共存生活が始まります。

私たち大人は、皆さんの応援団として、将来の見通しを持ち、未来の社会の担い手である皆さんが学ぶ機会、遊ぶ機会、交流する機会を最大限作っていきます。それまで、皆さんは今自分ができる予防をしっかり行い、将来の目標を持ち、家庭や学校で日々の学びを続けてほしいと願っています。

教職員をはじめ学校関係者の皆様へ

児童生徒等の学びを確保するための取組が行われているのは、学校の設置者や教職員の皆様が感染症対策と教育活動の両立に心を砕き、日々、大変な御尽力をいただいているおかげであり、心より感謝申し上げます。

本年六月から、ほとんどの学校において、教育活動が再開されていますが、児童生徒等や教職員など学校関係者の感染事例が見られるようになってきています。

そのような中、児童生徒等が新型コロナウイルス感染症を正しく理解し、よりよい実践ができるよう、学校における指導が一層、重要になってきていると考えています。

文部科学省では、今年の四月に、日常における保健の指導を念頭に置いた指導資料を作成し公表しました。更に、十月には、児童生徒等が感染症に対する不安から陥りやすい差別や偏見等について考え、適切な行動を取れるよう啓発する動画も作成する予定です。

児童生徒等への指導に当たっては、例えば以下の点を身に付けさせることが大切です。

▽感染症を予防するには、運動、食事、休養及び睡眠の調和のとれた生活を続けることが有効であること。
▽ウイルスから、自分自身を守るため、そして、大切な人を守るため、基本的な感染症対策や、「三密を避ける」等の予防策の徹底が必要であること。
▽誤った情報や認識、不確かな情報に惑わされることなく、正確な情報や科学的根拠に基づいた行動を行うことができるようになること。
▽感染者、濃厚接触者等とその家族に対する誤解や偏見に基づく差別を行わないこと。感染を責める雰囲気が広がると、医療機関での受診が遅れたり、感染を隠したりすることにもつながりかねず、地域での感染につながり得ること。
▽ウイルスに感染しても症状が出ない場合があり、自分が知らないうちに感染を広めることもあることから、重症化するリスクが高い高齢者や基礎疾患がある方に接するときは注意が必要であること。

これらに加え、医療従事者や社会活動を支えている人たちへの敬意や感謝も伝えてほしいと考えています。

また、大学等の高等教育機関においても、学生の感染事例が確認されています。各大学等におかれては、引き続き、「三密を避ける」ことなど、学生への適切な注意喚起等に取り組んでいただきたいと考えています。

文部科学省としては、差別や偏見等を防ぐための取組について、今後も継続して進めてまいりますので、学校の設置者や教職員の皆様におかれましても、組織的で継続的な取組をお願いいたします。

感染症への対応は、今後、長期にわたることが想定されますが、文部科学省としても、少人数によるきめ細かな指導体制の整備について検討するなど、令和時代のスタンダードとして新しい時代の学びの環境整備に引き続き取り組んでまいります。

保護者や地域の皆様へ

学校において、児童生徒等の学びを確保するための取組を進めることができておりますのは、保護者や地域の皆様に感染症対策の取組に御理解と御協力を賜っているからであり、心より感謝申し上げます。

しかし、このような取組を徹底しても学校や家庭、社会において感染するリスクをゼロにすることはできません。誰もが感染する可能性があります。
その上、新型コロナウイルス感染症には未だ解明されていない点があり、ワクチンも開発中であることから、この感染症に対する不安をお持ちの方が多いと思います。

私たちは、この感染症と、この感染症がもたらした社会の変化に対して、現時点での科学的な知見や見解に基づいて、正しく向き合うことが必要です。私からは、保護者や地域の皆様に次の二点をお願いいたします。

第一に、感染者に対する差別や偏見、誹謗中傷等を許さないということです。

誰もが感染する可能性があるのですから、感染した児童生徒等や教職員、学校の対応を責めるのではなく、衛生管理を徹底し、更なる感染を防ぐことが大切です。

そして、自分が差別等を行わないことだけでなく、「感染した個人や学校を特定して非難する」「感染者と同じ職場の人や、医療従事者などの家族が感染しているのではないかと疑い悪口を言う」など身の周りに差別等につながる発言や行動があったときには、それに同調せずに、「そんなことはやめよう」と声をあげていただきたい。人々の優しさはウイルスとの闘いの強い武器になります。

感染を責める雰囲気が広がると、医療機関での受診が遅れたり、感染を隠したりすることにもつながりかねず、結局は地域での感染の拡大にもつながり得ます。その点からも差別等を防ぐことは必要なことです。

第二に、学校における感染症対策と教育活動の両立に対する御理解と御協力です。

感染症への対応が長期にわたることが想定される中、学校では、感染症対策を講じつつ学校教育ならではの学びを大事にしながら教育活動を進め、子供たちの健やかな学びを最大限保障するための取組を進めていただいているところです。また、大学についても、感染症対策の徹底と、対面による授業の検討も含めた学修機会の確保の両立をお願いしております。

これからの予測困難な時代を生きていく児童生徒等や学生が、必要となる力を身に付けていくことができるよう、学校の教育活動の継続への御理解と御協力をお願いいたします。

新型コロナウイルスのみならず、感染症へ正しく対応するためには、最新の科学的な知見等を知ることが不可欠です。政府として、分かりやすい広報に努めているところですが、保護者や地域の皆様におかれても科学的な知見等を日々の生活に生かしていただきたいと思います。