2020/8/27

【解説】コロナで「M&A」業界は、どう変わったか

コロナで「事業売却」が増える

新型コロナウイルスの感染拡大による影響で、M&Aマーケットに異変が起きている。
今年の3~5月にコロナ禍でM&Aの需要が一時的に減退していたが、6月以降は引き合いや成約件数が、増加に転じている。
そもそもここ数年、後継者不在の企業を中心に、M&Aの成約件数は増加傾向にあった。売り手市場で、企業評価額を上回る金額で買収されるケースも多かった。
しかし、コロナ禍でM&Aの需要が一時的に減退。「昨年から事業売却の交渉を続けてきたが、新型コロナを機に企業価値が毀損し、交渉が決裂した」(自動車部品メーカー)
また別の飲食業者は「一部店舗の閉鎖や人員削減を行う予定だったが、買い主の同意を得られず、交渉が難航した」という。
ただ、6月に入って経済活動が戻り始め、コロナで経営状況が悪化した企業が増えたことで、再びM&Aが活発化している。
東証1部上場クラスの大手企業は、財務の改善を図ることを目的に子会社を売却。一方、準大手やジャスダック・マザーズ上場などの新興企業は人材やサプライチェーンの確保を目的に、戦略的な買収に打って出ている。
中小企業では、事業承継や廃業を視野に入れていた企業が、前倒しで買い手企業を探すようになった。また40代後半から50代の中小企業経営者が自社株を売却して雇われ社長となることを希望するケースも増えている。
ある40代のオーナー経営者は「就職超氷河期の経験から、先行きが不透明な経済状況に不安を覚える。事業継続を踏まえたM&Aを視野に入れている」と話す。

アフターコロナ準備のM&A