[24日 ロイター] - 短編動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」と親会社である中国の北京字節跳動科技(バイトダンス)は24日、同アプリに関する米国内の取引を禁じる米大統領令について、トランプ政権を相手取りロサンゼルスの連邦地裁に提訴した。

憲法違反として大統領令の差し止めを求めたほか、11月の大統領選再選に向けて「広範な反中国戦略」をさらに進めるための手段だと非難した。

また、ティックトックを国家安全保障上の脅威とするホワイトハウスの見解に反論し、「米利用者データのプライバシーとセキュリティーを保護するために特別な措置を取ってきた」と主張した。

ティックトックは「政府を提訴することを軽々しく考えてはいないが、わが社の米国事業を停止すると脅した大統領令には、他に選択肢はなかった」と訴えた。

トランプ大統領は6日、安全保障上の懸念を理由に、米企業などがバイトダンスや対話アプリ「微信(ウィーチャット)」を運営する中国の騰訊控股(テンセント)<0700.HK>と取引することを45日後に禁止する大統領令に署名した。

14日には、バイトダンスに対しティックトックの米国事業を90日以内に売却するよう命じた。米マイクロソフト<MSFT.O>のほか、オラクル<ORCL.N>が買収を検討している。

ティックトックとバイトダンスは6日の大統領令について、政府の懸念に対処する機会を会社側に与えずに取引を禁止することで、適正手続きを受けることを保障する憲法上の権利を侵害したと主張。同大統領令の恒久的な差し止めを求めている。

また大統領令の法的根拠についても、トランプ氏は国家的緊急事態時に大統領に国際商取引を規制することを認める「国際緊急経済権限法(IEEPA)」を悪用しており、適切な法的権限を持たないと主張。

「(大統領令は)IEEPAの甚だしい悪用であり、米大統領選に向けてトランプ氏がより広範な反中国戦略をさらに進めるための口実だ」としている。

両社の提訴はトランプ大統領と米商務省、ロス商務長官を相手取っている。

バイトダンスは2017年に動画アプリ「Musical.ly」(ミュージカリー)を10億ドルで買収し、翌年からティックトックとして再展開している。

訴状によると、この買収案件についてその後審査を行った対米外国投資委員会(CFIUS)は7月30日付の書簡で、安全保障上のリスクを指摘した。しかし、CFIUSの懸念に対応するためのバイトダンス側の提案について話し合うことを同委員会は「繰り返し拒否」した。バイトダンスの提案には、マイクロソフトへの事業売却の意向を示す拘束力のない文書も含まれていたという。

ティックトックの従業員1人も24日、大統領令が執行されれば約1500人の従業員が職を失うとして、トランプ政権を提訴した。

*内容を追加しました。