【働く場所の選択肢】コロナ後の「オフィス」を5つの視点から再考する

2020/8/26

💡オフィスについて再考しよう

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)はオフィスの概念を根本から変えた。
いつか(もし戻ることがあればだが)戻った時には、オフィスはこれまでとは永遠に違う場所になっているかもしれない。これはオフィスという場所について再考するためのガイドブックだ。

🤔考える5つのヒントは

私たちはパンデミックによって変化を余儀なくされており、その状況は人それぞれだ。しかし「オフィス」は様々な考え方の人が集まって働く場だからこそ、みんなで考える必要がある。こんなヒントがあるだろう。
1.そもそも私たちのオフィスへの執着に問題があった可能性も
2.パンデミックによって、より柔軟性のある、人間味のある就労形態の実現に向けた動きが加速しているようだ
3.多くの人が、自分が思っていたい上にオフィスとその文化を懐かしく思っている
4.従業員にオフィスに戻って欲しいならば、雇用主は特定の疑問に対する答えを出し、設計について思慮深い選択をする必要がある
5.もし私たちがオフィスに戻ることがあれば、そして戻った時には、これまでとは違うものが求められることになる可能性が高い

📝 一つひとつ考えよう

1.そもそも私たちのオフィスへの執着に問題があった
かつてオフィス出勤は「必須」だった。
その方が生産的で健全だからではない。雇用主たちがオフィス出勤を、私たちが働いていることの主な「証拠」として扱っていたからだ。
在宅勤務を認めたくない企業が、従業員同士が実際に顔を合わせる時間の長さを監視していた例もある。また、企業文化の醸成も理由となった。
私たちは同僚に見張られている、同僚に対して責任があると感じていた(実際には同僚が自分について評価を下すなどということはないのに)。
総合的に考えると、オフィスと出勤は私たちの健康にも精神衛生にもあまり良くないし、ワークライフバランスの達成にも役立ってこなかったかもしれない。
2.パンデミックによって、より柔軟性のある、人間味のある就労形態の実現に向けた動きが加速している
新型コロナウイルスのパンデミックが発生する前から、インターネットやモバイルテクノロジーと共に育った若い世代の労働者たちは、彼らにとっておそらく当たり前のものである「柔軟性」を強く求めていた。
子どものいる労働者たちは、生活の中の無駄をなくして仕事以外の部分(たとえば学校に子どもを迎えに行くなど)をもっと管理しやすくするために、より柔軟な働き方を取り入れることを渋る上司たちを批判してきた。
突然の全国的なロックダウン(封鎖措置)が実業界に何かを証明したとすれば、それは多くの人がこれまで夢見ていた以上に、「大勢の人のリモートワークが可能だ」ということだ。
もしかしたらこの先には、企業が従業員の業績を評価する方法を変えるべく取り組みを行う、より良い未来が待っているかもしれない。
私たちがオフィスに戻ろうと決める頃には、オフィスでの労働環境がこれまでよりもずっと柔軟になっていて、オフィスが提供すべき優れた価値は何かという認識も変わっているかもしれない。
3.多くの人が、自分が思っていたい上にオフィスとその文化を懐かしく思っている
新たに普及したリモートワークは、多くの労働者が既に表明してきた願望と一致している。
オフィスは都市の中心部にあることが多いため、リモートワークになったことで人々は長い通勤時間をかけずに済むようになり、オフィスに拘束される時間を減らすことができるようになった。
マネージャーたちは頻繁にコミュニケーションを取ることで、在宅勤務の従業員たちをうまく監督することができるし、それぞれのスタッフの状況や、生産性をどう測るかに注意を払うことができる。
だが事態が落ち着き始めたところで、多くの人からオフィスを懐かしむ声が上がっているのも事実だ。
米生命保険会社プルデンシャル・ファイナンシャルのロブ・ファルゾン副会長は「私たちが長期にわたって完全にリモートで仕事をしている間に、(企業)文化が崩れていくのではと懸念している」と語る。
同社の従業員2万2000人は、3月上旬にその大半がリモートワークに切り替えた。プルデンシャルでは従業員がストレスの問題に対処するのを支援するために、カウンセリングなどの福利厚生を拡充させ、マネージャーや医療の専門家にアクセスしやすい環境を整えた。
だが人々の健康で幸せな生活を維持するための取り組みは、大きな全体図の中の小さな要素にすぎないとファルゾンは考えている。
「職場で一緒にいることの利点は、同僚との関係を育んだり、非公式なやり取りがあったりするところにあり、それが企業文化を築き、強化していくのだ」
4.従業員にオフィスに戻って欲しいならば、雇用主は特定の疑問に対する答えを出し、設計について思慮深い選択をする必要がある
効果的なワクチンがまだ完成しておらず、世界各地で今後さらなる感染拡大の波が予想されるなか、知識労働者を自宅に帰し、リビングルームで仕事をさせるという壮大な実験は新たな段階に移行しつつある。
多くの従業員は、職場に戻っても安全だろうかという疑問を抱えており、この疑問については、あまりに多くの要素がありすぎて誰も確実な答えが出せない状況だ。
だがこのほかにも「そもそもなぜオフィスに戻るのか」「自分のオフィスがある建物はどれぐらい健康的なところなのか」など、考えるべき問題はある。
パンデミックの中でオフィスを再開するために各企業がするべきことは、各施設を安全に稼働できるようにすることだけでない。
従業員にそれを納得させることも必要だ。パンデミックの発生から7カ月。専門家は、何カ月も前に作成した中途半端なオフィスの設計案はもう通用しないと指摘する。
ウイルスの拡散を効果的に抑制できるだけでなく、従業員の職場復帰を快適な、もっと言えば美しい経験にするようなオフィス設計が求められる。
5.もし私たちがオフィスに戻ることがあれば、そして戻った時には、これまでとは違うものが求められることになる可能性が高い
新型コロナウイルスのパンデミックは、何があっても出勤しろという考え方(誰の利益にならない場合でもオフィスに行かなければならないというプレッシャー)に終止符を打つものとなるかもしれない。
少なくとも短期的には、オフィスの活気がやや失われ、ピリピリした雰囲気で緊張を強いられる場所になる可能性もある。
だが一方で、パンデミックのお陰で仕事に行く「本当の理由」が重視されるようになることも確かだろう。
そしてもしも、一部の企業が導入を余儀なくされている、より人間味のある実践(従業員はそれぞれが複雑な生活を抱えた人間であることを認識した上での実践)が定着すれば、私たちが戻る職場はこれまで以上に優しい、寛大な場所になっているかもしれない。
元の記事はこちら(英語)。
(制作:Quartz Staff、翻訳:森美歩、バナーデザイン:月森恭助)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with HP.