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  • 2020/08/19 掲載

政府の「新IT戦略」が大幅変更、コロナ禍が影響したポイントとは

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新型コロナウイルス感染症の影響により、社会やビジネスは大きく変わろうとしている。政府はこれまで、「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」をデジタル施策の中心に据えていたが、これを見直し、コロナ渦の変化に対応していくための政策を進めようとしている。その取り組みで実現したいと考えているのが、多様性に価値を見出す「選択すべき未来」の姿だ。政府が進める各種施策の内容を解説しながら、日本人はどういった未来を選択していくべきなのだろうかを考察する。

執筆:国際大学GLOCOM 客員研究員 林雅之

執筆:国際大学GLOCOM 客員研究員 林雅之

国際大学GLOCOM客員研究員(NTTコミュニケーションズ勤務)。現在、クラウドサービスの開発企画、マーケティング、広報・宣伝に従事。総務省 AIネットワーク社会推進会議(影響評価分科会)構成員 一般社団法人クラウド利用促進機構(CUPA) アドバイザー。著書多数。

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withコロナで変化した政府が目指す未来社会とは
(Photo/Getty Images)

政府の新IT戦略で示された「ニューノーマル」の視点

 日本政府は2020年7月17日、「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」の変更を閣議決定した。

 同基本計画は、2019年6月に閣議決定されたものを「官民データ活用推進基本法」に基づき、その内容が変更された。今回の変更では、新型コロナウイルス感染症がもたらした社会や価値観の変容と課題、政策策定の視点が多く盛り込まれている。

 新型コロナウイルス感染症は、日本の経済や生活、働き方、教育、行政、医療、防災など、さまざまな分野での社会や価値観の変容をもたらした。

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新型コロナウイルス感染症がもたらした社会・価値観の変容
(出典:内閣官房IT総合戦略室「IT新戦略※(案)の概要」より 2020年7月)

 また、内閣官房IT総合戦略室では、今般の緊急事態下ではデジタル対応で指摘されている課題例として以下の点を挙げている。

  • 特別定額給付金や雇用調整助成金などの手続きの遅さに関する問題
  • テレワークによる手続きや契約に係る書面・押印の慣行などに起因して、出社を余儀なくされた問題

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今般の緊急事態下でのデジタル対応について指摘されている課題例
(出典:内閣官房IT総合戦略室「IT新戦略※(案)の概要」より 2020年7月)

 こういった状況を踏まえ、政府は、社会や価値観の変容を受けた戦略策定の視点での戦略の方向性を示している。「Society5.0時代におけるデジタル化」について、コロナ後の「新たな日常(ニューノーマル)」の視点から、「対面・高密度から『開かれた疎』へ」「一極集中から分散へ」「迅速に危機対応できるしなやかな社会へ」という展開を表現している。

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社会・価値観の変容を受けた戦略策定の視点
(出典:内閣官房IT総合戦略室「IT新戦略※(案)の概要」より 2020年7月)

 政府のIT新戦略の全体像の基本的な考え方は、国民が安全で安心して暮らせ、豊かさを実感できる強靱なデジタル社会を実現することであり、やはりコロナ後のニュー・ノーマルの視点を重要な戦略として位置付けている。

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デジタル強靱化社会におけるIT新戦略の全体像
(出典:内閣官房IT総合戦略室「IT新戦略※(案)の概要」より 2020年7月)



「選択する未来2.0」とは、ここ数年の取り組みが重要な理由

 コロナ渦の「新たな日常(ニューノーマル)」では、ここ数年の取り組みが未来を左右する大切な選択の時期となっていることがうかがえる。

 内閣府は2020年7月、令和2年第10回経済財政諮問会議を開催して「選択する未来2.0」中間報告を公表した。

 選択する未来2.0とは、2014年1月に経済財政諮問会議の下で設置された専門調査会である「選択する未来」委員会の後を受けた有識者からなる懇談会のこと。選択する未来委員会の報告に盛り込まれた2020年ごろまでに取り組むべき対応の進捗状況について検証し、今後必要になる対応の検討に資することを目的としている。

 「選択する未来」では、50年後においても1億人程度の人口規模を有し、安定した人口構造を保持するという目標や、少子化と人口減少の克服、生産性の飛躍的向上や地域の再生などへの取り組みをまとめていた。

 新型コロナウイルス感染症の影響は、経済社会に大きな打撃をもたらし、人々のこれまでの価値観を大きく変えつつある。前述したように、長年に渡り広がらなかったテレワークやオンライン会議などの働き方改革も一気に加速した。企業にとっては「二の足を踏んできたことでも実現可能である」という実感持てるようになっている。

 また、雇用や事業活動、生活への支援に万全を期しつつ、この「働き方改革」の潮流を契機と捉え、長年解決が進まなかった課題を一気に解決することができれば、望ましい未来である「新たな日常(ニューノーマル)」を選択できるようになるだろう。

政府が考える「何としてでも回避したい未来」とは

 一方、その取り組みが中途半端に終われば、新型コロナ以前の問題がむしろ悪化する姿(現状維持も困難になる停滞経済)になる恐れも十分にある。選択する未来 2.0の中間報告では、「回避すべき未来」が待ち受けている可能性を指摘している。

 回避すべき未来とは、一体どんなものなのか。中間報告では以下のようにまとめている。

  • 多様な能力が認められず、働き方も画一的で、新しい発想やイノベーションが生まれない社会
  • 男性中心の硬直的な働き方や社会構造が変わらず、所得が伸びずワークライフバランスも実現できない社会
  • 危機時の負担が女性や高齢者などの社会的に弱い立場の人に集中し、生活の質における格差も広がり、個人が幸せを感じられない社会
  • 企業が従来以上にリスクに慎重となり、雇用や投資を行わず、イノベーションも不活発、持続的な成長が実現できない社会

 こうした未来は回避する必要がある。重要なのは、新たな日常(ニューノーマル)における「選択すべき未来」だといえる。

 選択する未来 2.0の中間報告では「選択すべき未来」について、多様性を尊び、変化を取り入れ、通常10年かかると想定されていた変革を一気に進めることを提言している。仕事の仕方やライフスタイルを変え、多様性にこそ価値がある新たな日常(ニューノーマル)を目指していくのである。

【次ページ】日本が今後実現したい「選択すべき未来」とは具体的には何か

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