【解説】イスラエルとUAEが「国交正常化」に込めた思惑
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欧米諸国は、米国を筆頭に、イスラエルとUAEの国交正常化を歓迎しています。日本もそうですが、欧米諸国が中東に求めるのは、「安定」です。民主化や人権以上に、紛争が起きず、難民がヨーロッパに流出しないことの方が、実際には重要です。そして、石油や天然ガスが安定して生産・輸出されることです。
欧米諸国は、紛争さえ起きなければそれでいいですが、より当事者であり、「同胞」へのシンパシーを示す世論を抱える中東各国は、反応が分けれています。
公式に非難している国:イラン、トルコ
公式に歓迎している国:オマーン、バーレーン
サウディアラビア、トルコ、エジプト、ヨルダン、クウェイトのように、自国の国民感情に配慮して、公式な反応を示さない国が多いです。オマーンやバーレーンだけでなく、エジプトとサウディアラビアは、、国交正常化を支持するのが本音でしょうが、国民の世論は反発しているので、公式な支持は表明したくありません。
イスラエルは、アラブ諸国の政府は、様々な手くだで取り込むことはできますが、アラブ諸国の一般の世論から好意を得ることは、まず無理です。アラブ諸国政府が世論を押さえつけられるうちはいいですが、もし政府がひっくり返れば、イスラエルは、オセロの盤面のほとんどがひっくり返って囲い込まれたような立場になります。
最も明確に非難している国、イランがイスラエルの公式な敵ナンバー1です。イランがレバノンやシリアに自国軍を駐留させ、イスラエルに攻め込んでくる、というシナリオが、最も警戒されるシナリオです。
そして、近年は、もう1カ国、トルコが、近年は急速に反イスラエルに転じています。トルコは、UAEがイスラエルと国交正常化するならば、UAEとは断行するとまで表明しました。トルコは、今やシリアとリビアに軍を展開し、UAE軍やエジプト軍と交戦しています。
イスラエルとしては、安全保障上の脅威として大きくなってきたイランとトルコを抑えるために、エジプトやUAEといったアラブ諸国の軍事力を利用するという選択肢を強化したいところです。イスラエルとUAEが国交正常化に向けて合意を結びました。
もともと、アラブ諸国とイスラエルはパレスチナ問題を巡って対立してきた歴史があるだけに、かなり驚きました。
今回の合意の背景にはもちろん、両国の「共通の敵」でもあるイランの存在があります。
ただ、実際のところイランは新型コロナで大打撃を受けていて、今まさに脅威が増大しているわけではありません。
にもかかわらず、UAEもイスラエルも合意を急いだ背景は何なのか。
イラン情勢に精通する鈴木一人プロのコメントを交えて解説します。
今年1月にお届けした、以下の記事と合わせてご高覧いただけますと幸いです。
【図解】ニュースを理解するために、中東の「争点」を学ぼう
https://newspicks.com/news/4534518イスラエル・UAE・米国の合意の背景を、歴史、各国の思惑、戦略にふれながら、わかりやすくまとめた.記事だった。「イラン・ファクター」がイスラエルとUAEを結びつけたことだけではなく、この記事が指摘しているように「中国・ファクター」もあることが重要だ。中国がイランに4000億ドル(約42兆円)投資して、港湾や鉄道といったインフラ整備を行う見返りに、イランは原油を格安で譲渡する構想。米国は気が気でないだろう。米国のイラン対策に穴があいてしまう。中東の3者合意には、米国の中国対策が絡んでいる。
と考えてきて、朝鮮半島問題にヒントがあることがわかった。トランプさんが、まだ米朝首脳会談再開に一縷の望みを持って北朝鮮に秋波を送っているのは、北朝鮮を「中国陣営」から引き離したいという思惑があるという視点が必要になってくる。