[ドバイ/エルサレム/ワシントン 13日 ロイター] - イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)は13日、国交を正常化し、新たに幅広い関係を築くと発表した。パレスチナ問題やイランとの紛争など中東の政治秩序を塗り替える動きで、仲介役を務めたトランプ米大統領は「歴史的な合意」と称賛した。

イスラエルは合意の下、ヨルダン川西岸の併合計画を凍結する。

トランプ大統領はツイッターへの投稿で「大々的な打開に達した!米国の偉大な友好国であるイスラエルとUAEによる歴史的な和平合意だ」と述べた。

3カ国が長らく続けてきた協議はこの日、トランプ大統領、イスラエルのネタ二ヤフ首相、UAEアブダビ首長国のムハンマド・ビン・ザイド皇太子が行った電話会談で合意に達した。

共同声明では「イスラエルとUAEの関係性を完全に正常化させることで合意した」とし、合意により、両国が「中東地域の素晴らしい可能性を解き放つ新たな道筋を描くことができる」とした。

トランプ大統領は「誰もが不可能と考えていた。49年をへて、イスラエルとUAEは国交を完全に正常化する」と述べ、イスラエルとUAEの代表による署名式をホワイトハウスで数週間以内に開催する計画とした。さらに、中東地域の他国とも同様の和平合意を巡り協議していると付け加えた。

ネタニヤフ首相はツイッターへの投稿で「イスラエルにとって歴史的な日だ」とコメントした。ムハンマド・ビン・ザイド皇太子も「合意によって、イスラエルによるさらなるパレスチナ併合は停止される。両国の協力や二国間関係の構築に向けた行程表の策定でも合意した」と述べた。

3カ国の共同声明によると、イスラエルとUAE両国の代表が数週間以内に会合し、投資や観光、直行便の運航、安全保障などを巡る二国間合意書に署名する。大使館設置や大使の派遣も近く開始する見通しという。また、新型コロナウイルスのワクチンや治療法の開発で協力を拡大する。

交渉に携わったポンペオ米国務長官は、イスラエルとUAEの合意は「正しい道筋」向けた「大きな」一歩と称賛した。

これに対し、パレスチナ自治政府のアッバス議長は合意を拒否。アブ・ルデイナ報道官は「エルサレムやアルアクサ・モスク(イスラム教礼拝所)、パレスチナの大義に対する裏切り」とした。

パレスチナ自治政府高官のハナン・アシュラウィ氏は、合意が間近に迫っていたことをパレスチナ側が認識していたかとの問いに対し、「知らなかった。われわれは不意打ちを食らった。完全な裏切りだ」と述べた。

パレスチナ自治区のガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスの報道官は「国交正常化はパレスチナの大義に対する背任であり、イスラエルによる占領のためだけのものだ」とした。

UAE高官はイスラエルとパレスチナに対し、交渉を再開するよう求めた。

トランプ大統領のブライアン・フック特使は、合意はイランにとって「悪夢」になると述べた。

イラン当局者は、合意は中東地域の平和を確約するものではないと言及。イラン議会議長の顧問、ホセイン・アミール・アブドラヒアン氏はツイッターで、「パレスチナの大義に背を向けたUAE政府の動きには正当性がない。この戦略的な過ちにより、UAEはシオニズムの火に包まれることになるだろう」と述べた。

中東和平を巡る合意はイスラエルとヨルダンが1994年に締結した和平条約以来。11月の米大統領選で再選を目指すトランプ大統領にとっては、外交政策における実績という重要なアピール材料となる。

*内容を追加しました。