2020/8/14
【新】『夢をかなえるゾウ』が、社会現象になった理由
まるで預言者のように、新しい時代のムーブメントをいち早く紹介する連載「The Prophet」。今回登場するのは、シリーズ累計400万部のベストセラー『夢をかなえるゾウ』で知られる、作家の水野敬也氏だ。
笑って泣ける「自己改革エンタテインメント小説」という、それまでになかったアプローチの自己啓発書として一大ブームを巻き起こした同シリーズ。著者の水野氏は、デビュー作『ウケる技術』(共著)や、恋愛ハウツー本『LOVE理論』などのヒットもあって、世間的には「お笑い系」のイメージが強いかもしれない。
だが、日本中を爆笑させたベストセラーは、実は、果てしない苦悩と内省の産物だった……。
今回の「The Prophet」では、5年ぶりのシリーズ最新刊『夢をかなえるゾウ4 ガネーシャと死神』(文響社)の刊行に寄せて、水野氏にインタビュー。その創作の源泉をひも解くと同時に、水野氏が新たに掲げる「ミッション」に迫る。
本と時代が「たまたま」一致した
──『夢をかなえるゾウ4』では、「避けられない“死”を意識することによって、よりよく生きる」ことがテーマになっています。まさに、今のコロナの状況を見越したような一冊ですね。
水野 不思議ですよね。
この『4』は、もともとネット上で発表していた小説がベースになっています。こちらがうまくいかずに悩んでいたところへ、同じテーマを『夢をかなえるゾウ』でやってみたらどうかとアドバイスしてくれた方がいて、改めて執筆を始めたという経緯があるんです。
結局、世に出るまでに構想から3年かかりました。
ようやく今年、刊行にこぎ着ける目処がついたときは、「めでたいオリンピックの年にこんなテーマの本を出してウケるのだろうか?」などと考えていました。むしろ、自分としては時代に逆行しているような感覚でしたね。
それが突然、コロナで世界が変わってしまった。
Twitterなどでも、「水野は時代の空気を読んで新刊を出してきた」みたいに言われることがありますが、そんなことできるわけがないですよ。
「このままでは幸せになれない」
──「成功本」として知られる『夢をかなえるゾウ』シリーズの中でも、今作ははっきりと「幸福論」に寄っている点が特徴的です。
『夢をかなえるゾウ』の1~3で僕が書いてきたのは、ある意味「資本主義的なピラミッドの上り方」です。