優しさを表現する絵文字が選ばれている

絵文字はとても小さな記号だが、大きな力を秘めている。会話をぐんと楽しくしてくれたり、大事な時に友人を励ましたりすることもできる。
コミュニケーションツールSlack(スラック)の新たな調査によれば、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)下では、この絵文字がコミュニケーションにおいてこれまで以上に重要なツールになっているようだ。
パンデミック以降、Slackでリモートワークをしている人々が使う絵文字は以前に比べて80%増えており、何カ月も離れている同僚との関係をつなぐような、これまで以上にオープンに愛情や優しさを表現する絵文字が選ばれているという。
Slackの調査・分析部門を統括するクリスティーナ・ジャンザーは、「調査を行って興味深かったことのひとつは、絵文字が全てのものをまとめる役割を果たすようになっていることだ」と語る。
ジャンザーによれば、今年Slack上では、これまでの🎉(ジャジャーン)を抜いて❤️(赤いハート)が最もよく使われているという。
メッセージが自分の意図したとおりに伝わるように言葉のトーンを表す絵文字も、これまでより頻繁に使われている。
たとえば「いいですよ」という言葉に😊や😠の絵文字を足すことで、送信者の感情をより正確に伝え、違った解釈がなされる余地を減らすことができる。
豪メルボルンで現在、在宅勤務(リモートワーク)をしているアドビ(Adobe)の活字デザイナーのポール・ハントは、パンデミック中に絵文字が役に立っていると言う。
「この期間を過ごす上で、絵文字があることは嬉しい」と彼は語った。「味気ない言葉にちょっとした彩りや感情の高まりを付け足すことができる。そのほんの小さな明るさでも、人を温かい気持ちにさせる効果がある」

新しい絵文字も

毎年新たな絵文字セットを策定する非営利団体「ユニコード・コンソーシアム(Unicode Consortium)」のメンバーでもあるハントは、パンデミックという独特の状況により、これまであまり活用されてこなかった幾つかの絵文字が頻繁に使われるようになったとも指摘する。
絵文字情報サイトEmojipediaの調査を引用し、「今回の新型コロナウイルス👑 🦠の感染拡大を受けて、これまで見過ごされてきた幾つかの絵文字の価値が評価されている。
特に石鹸を表す絵文字🧼は、頻繁に手洗いをすることの重要性を思い出させてくれるし、マスクをした顔の絵文字😷は、ほかの人に配慮して公共の場所に行く際にはマスクを着用するよう奨励するのに役立つ可能性がある」と説明している。
ツイッター(Twitter)上でも、マスクをした顔やマイクロバイオーム、さまざまな表情の絵文字の使用頻度が増えている。
以下の円グラフは、新型コロナウイルスまたはCovid-19(新型コロナウイルス感染症)に言及しているツイート2454件に使われた絵文字の内訳だ。Emojipediaが20万件を超えるツイートを対象に実施したさらに幅広い調査では、マスクをした顔の絵文字の人気は以前よりも100ランク(順位)アップし、マイクロバイオームの絵文字は133ランクアップした。
ツイッター上で使われた絵文字の内訳(2020年3月):EMOJIPEDIAより

カスタム絵文字の増加

ジャンザーは、現在入手可能な3304種類の絵文字に加えて「カスタム絵文字」が、集団に一体感をもたらす上でとりわけ有効だと指摘する。
カスタム絵文字はJPEGやPNG、あるいはGIF形式の画像をSlackにアップロードすることで作成でき、企業独自の図形文字のような役割を果たす。
カスタム絵文字はワークフローの中のタスクの状況を示したり、企業の価値観を象徴したり、あるいは独自のアバターを使って同僚を祝福したりするのに使える。
医療保険のスタートアップ企業「オスカー・ヘルス(Oscar Health)」はカスタム絵文字を多用しており、オンデマンドでカスタム絵文字を作成する「Emotiqueue(エモティキュー)」というボットまである。
現在、同社のシステム上には5600個の独自の図形が登録されており、新規登録されたカスタム絵文字は従業員向けに毎日送られる概要連絡にまとめられている。
Slackでは最近、リモートワークをしている人々の絵文字セットを導入した。
14の新しい絵文字の中には、自分の反応がとりわけ遅い理由を説明するのに使える「壊れたWi-Fiのマーク」や、家庭内で仕事の手を休めなければならない事態が起きたことを示すのに使える「ネコがノートパソコンを踏みつけているマーク」などがある。
リモートワークの絵文字セット例:SLACKより
同様に、コラボレーション・プラットフォームのAir(エアー)はSlack用の外出自粛絵文字パックを作成したという。
新型コロナウイルスをテーマに、貴重なトイレットペーパーのパックやスウェット姿の従業員、軽食のボタン、長いロックダウンの間に時間の感覚がなくなるお馴染みの感覚を表したカレンダーもどきのアイコンなどの絵文字がある。
「これまでは軽いノリの楽しいツールだと考えていたが、絵文字にはもっとずっと大きな意味合いがある」とジャンザーは言う。「絵文字の使い方から、企業の文化について学ぶことができるのは本当に興味深い」
元の記事はこちら(英語)。
(執筆:Anne Quito、翻訳:森美歩、バナーデザイン:月森恭助)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with HP.