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テレワークで見えた境界線防御の限界か セキュリティ新常識「ゼロトラ」「SASE」「KMaaS」とは

ガートナージャパンは国内のデジタルワークプレースにおけるセキュリティのハイプ・サイクルを新たに発表した。コロナ禍で急激に変容した働き方を前にセキュリティサービスや概念はどう変化したのだろうか。

» 2020年08月11日 07時00分 公開
[キーマンズネット]

 ガートナージャパンは2020年8月5日「日本におけるセキュリティ(デジタル・ワークプレース)のハイプ・サイクル:2020年」を発表した。同社のハイプ・サイクルとは、テクノロジーやサービス、それらに関連する概念や手法などの認知度、成熟度や採用状況および各キーワードが実際のビジネス課題の解決や新たな機会の開拓にどの程度関連する可能性があるかを、視覚的に示したものだ。

 このほど発表されたハイプ・サイクルは、国内におけるセキュリティおよびリスクマネジメント分野のうち、特にデジタルワークプレースのセキュリティ領域において注目すべき重要なキーワードを取り上げている。

 デジタルワークプレースとは、米国を中心に普及している用語で、コラボレーションツールやチャット/Web会議、ファイル共有アプリケーションなどを活用してデジタル上に業務進行に必要なスぺ―スを作り出すことを指す。時間や場所、アクセスする端末を選ばずに業務ができ、業務効率化にも寄与する。

テレワークで見えたネットワークセキュリティの“限界”

 2020年は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大対策の一環として、多くの企業がテレワークを実施できる環境を急いで整備する必要に迫られた。このことが企業にとってワークプレースの在り方を再考する大きなきっかけとなり、新たな働き方や環境整備についての議論を呼んでいる。一方、新たなワークプレースを構築した場合のセキュリティ対策については、多くの企業がその重要性を認識しているものの、何をどこから始めるべきなのかが分からず、全体に混乱が続いているという。

日本におけるセキュリティ(デジタル・ワークプレース)のハイプ・サイクル:2020年 出典:ガートナー(2020年8月)

 ガートナージャパンによると、テレワークの拡大を背景にIDやパスワードといったユーザーアカウント情報を一元管理するSaaS(Software as a Service)型のアイデンティティー/アクセス管理サービスや複数のクラウドサービスを可視化、制御して一貫性のあるポリシーを適用する手法「CASB」(Cloud Access Security Broker)、私用端末の業務利用(BYOD)、電子サインといったサービスにはより多くの関心が集まっているという。

新たに追加された「ゼロトラ」「SASE」「KMaaS」

 さらにガートナーは、企業のクラウドやモバイルの積極的な利用の動きに合わせて、セキュリティ対策の検討も進むと考えられるテクノロジーを新たに3項目追加した。

 新たに追加されたのは「ゼロ・トラスト・ネットワーク・アクセス」「SASE(Secure Access Service Edge)」「KMaaS(サービスとしての鍵管理:Key Management as a Service)」だ。

 特に「ゼロ・トラスト・ネットワーク・アクセス」は追加されて早々、過度な期待のピークを超えたと位置付けられている。テレワークではWebアプリケーションで提供されるサービスの利用が増加し、以前のようなネットワークでの「境界防御モデル」で万全なセキュリティ対策を実施することは難しくなったこととその考え方の浸透を表している。 SASEとは場所や時間を問わずクラウドにあるアプリケーションやデータ、サービスに安全にアクセスできるようにするセキュリティフレームワークを指す。KMaaSはデータの暗号化に使用する暗号化キーの作成や管理サービスのことだ。いずれもクラウドサービスの利用を前提とする。

 ガートナージャパンのアナリストで、シニアプリンシパルでもある矢野 薫氏によると、これまでも「働き方改革」という名称でテレワーク環境の整備が国内企業でも進められてきたが、その多くは一部の従業員による申請ベースでの短期的な利用といった限定的な実施だった。現在のデジタルワークプレースの検討は、より多くの従業員を対象により長期的かつ柔軟に働ける新しい環境を構築することに主眼が置かれている。セキュリティについても、この新しい働き方および環境を前提にテクノロジーへの理解を深め、新たな議論を開始することが急務だとしている。

 「デジタルワークプレースのセキュリティがこれまでのセキュリティと大きく異なるのは、ユーザーのニーズとセキュリティ上のリスクが、さらに多様化する点です。この2つの動向に正しく追随していくことがセキュリティ責任者に課せられた新たなチャレンジとなっています。本ハイプ・サイクルに示されている通り、セキュリティ技術の発展で、多様化するニーズとリスクに応じて、企業が選択できる技術は増えてきました。本ハイプ・サイクルで取り上げたうち、既に成熟度が高いもので、自社でまだ導入していないものがあれば、必要性の高さを判断して積極的に導入を検討してください」(矢野氏)

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