2020/8/11

【現場ルポ】トヨタはこうして「巨額利益」を生み出している

キアラシ ダナ
NewsPicks記者 (モビリティ・国際担当)
7月29日、愛知県豊田市にある高岡工場をトヨタ自動車のある幹部が訪れていた。
CFOの近健太。
売り上げにして29兆円の巨大企業を束ねる、トヨタの金庫番だ。近CFOは高岡工場をじっくりと視察した後、働く従業員に向かってこう述べたという。
「これで来週は、安心して決算発表ができます」
それから1週間後の8月6日、トヨタは2021年3月期1四半期の決算を発表した。
新型コロナウイルスの影響で、自動車各社が赤字決算となる中、トヨタだけが1588億円の最終黒字を確保。通期でも7300億円の最終黒字を見込んでいる。
なぜ、トヨタだけが利益を生み出すことができるのか。
その理由について経営陣は、決算会見や株主総会のたびに「原価の作り込み」という言葉で説明してきた。
これは、車1台を作るのにかかる費用を極力下げようという取り組みで、トヨタによると、現場の隅々まで原価改善の意識が浸透しているという。
近CFOも、高岡工場での改善活動を確認して、改めてトヨタの強さを再認識したのだろう。
では、その現場ではどんな取り組みが行われているのか。
NewsPicksはあまり知られていない原価低減の実態を確かめるべく、近CFOが訪れた高岡工場に足を運んだ。

「トヨタ生産方式」の本質

7月下旬、NewsPicks編集部は高岡工場を訪れた。愛知県豊田市にあるトヨタ本社から車を走らせること30分。田舎道に突如として、巨大な自動車工場が姿を現す。
トヨタのお膝元にあるこの工場は、1966年から現在に至るまで一貫して主力車種の「カローラ」などの生産を担ってきた。現在、年間約20万台を出荷している。
工場内は隅々まで整理整頓が行き届いており、広々とした空間が印象的だ。
トヨタのクルマづくりは、「トヨタ生産方式」という名で、世界中で知られている。その言葉から、何か特別な生産ノウハウが隠されているように聞こえるが、実態はそうではない。