2020/8/8

【現場発】「未知の感染症」を、治療する方法

NewsPicks 編集委員 / 科学ジャーナリスト
新型コロナの感染者数が、日本で再び急増している。
全国の感染者数は、5月が2488人、6月が1748人と徐々に落ち着きつつあるとみられたが、7月だけで実に1万7367人もの増加だ。
8月7日午前0時時点の累計感染者数が4万3815人だから、いかに足元で感染者数が伸びているかが分かる。
ただし、重症者や死亡者の数も、同じ勢いで増えているわけではない。
その背景には、検査数の増加や、患者の年齢構成の変化など、さまざまな要因があるのだが、患者を受け入れる医療機関側に、「治療のノウハウ」が蓄積されてきたことも挙げられるだろう。
何しろ、まだワクチンはなく、特効薬も存在しない中で、2万8000人以上が回復しているのだ。回復した人たちの中には、重症化の例も多数含まれるから、光はある。
新型コロナウイルス感染症の重症患者は、どんな経過をたどるのか。また、医療機関では今、どのような治療をしているのだろうか。
国内発症2例目の患者から受け入れてきた聖路加国際病院(東京都中央区)。ここで多数の患者を診療してきた仁多寅彦・呼吸器内科医長がNewsPicks編集部の取材に応じ、具体的な治療戦略をデータとともに明かした。
記事中、仁多医師も述べているように、あくまで1医療機関のデータであり、標準治療になっていない治療も含まれる点には注意が必要ではある。しかし、医療の最前線の実感が伝わる、貴重な内容になっているはずだ。

コロナ患者の「経過」の全貌

──まず、入院患者の主な「経過」を教えてください。
仁多 最初の患者を受け入れた1月下旬以降、疑い例を含めた入院患者数の推移は、4月下旬の最も多いときで1日約40人。その時期は、10人以上が集中治療室にいました。最近は患者数がまた増えてきています(下グラフ参照)。