2020/8/7

「未承認ワクチンの大量生産」に未来を賭けるインドの大富豪

The New York Times
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オックスフォード大学と協働

5月はじめ、世界最大のワクチンメーカーである「インド血清研究所(Serum Institute of India)」の冷蔵室に、厳重に封をされたスチールボックスが届いた。
ドライアイスと一緒に収められていたのは、英オックスフォード大学から送られてきた容量1mlの小さなバイアル(薬瓶)。その中身は、新型コロナウイルスのワクチンとして世界で最も有望視されている細胞物質のひとつだ。
白衣をまとった科学者たちはそのバイアルを14号棟に運び、中身を慎重にフラスコに注ぎ入れ、ビタミンと砂糖の溶液を加えて培養を開始。
世界を襲うCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)という悪夢を終わらせるワクチンを発見するための、史上最大規模の賭けが始まった。
インド血清研究所の研究員たち(Atul Loke/The New York Times)

大損も覚悟の「賭け」

インドの大富豪一族が経営するインド血清研究所では、現在、ワクチン開発競争に参加している一部の企業と同様に、ワクチン候補の大量生産に取り組んでいる。まだ臨床試験の段階にあり、効果がない可能性があるにもかかわらずだ。