2020/8/4

【現地発】イタリアが「コロナ禍から脱却」できた理由

The New York Times
自動Pickロボット

コロナ初期の「最大の被害者」

ヨーロッパで新型コロナウイルスの感染爆発が起きたとき、イタリアは悪夢のような「震源地」として恐れられた。
アメリカやヨーロッパの多くの国々にとって、イタリアは「制御不能な感染拡大」の代名詞であり、なんとしても回避すべき事態の象徴だった。
「イタリアで起きていることを見るがいい」。ドナルド・トランプ大統領は3月17日、記者団にそう語っている。「あんな目には遭いたくないだろう」
国民皆保険「メディケア・フォー・オール」に反対の立場を取る民主党のジョー・バイデンは、大統領選の討論会で、イタリアの医療崩壊を引き合いに出して次のように述べた。「イタリアでは、(国民皆保険は)機能していないではありませんか」。
それから数カ月を経て、アメリカ合衆国は他のどの国よりも大量の死者を出している。かつてイタリアを見下していたヨーロッパ諸国も、いまや自分たちの国が新たな感染拡大に苦しんでいる。各種制限を強化し、再びロックダウンを検討している国もある。
イギリスのボリス・ジョンソン首相は、同国での感染率が上昇したことを受けて、予定されていた制限緩和を延期すると発表した。
感染防止対策の適切さや、徹底した接触者追跡で称賛されていたドイツでさえ、国民に対して「気の緩んだ行動が再び感染者数の増加を招いている」と警告を発している。
3月当時のイタリアは大勢のコロナ犠牲者を出し、「震源地」と恐れられた(Alessandro Grassani/The New York Times)

コロナ病棟は「開店休業」状態

では、イタリアはどうだろう? 今現在、同国内の病院に、新型コロナウイルス感染症患者の姿はほとんど見られない。
かつてコロナが猛威を振るった北イタリアのロンバルディア州でも、コロナによる毎日の死亡者数はゼロに近い。