2020/7/31

【新】私が「世界初の新型コロナウイルス小説」を書いた理由

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まるで預言者のように、新しい時代のムーブメントをいち早く紹介する連載「The Prophet」。今回登場するのは、作家で医学博士の海堂尊氏だ。
この春、新型コロナウイルスの感染が国内外で拡大する中で、海堂氏が2011年に刊行した長編『ナニワ・モンスター』(新潮社)が、新たに脚光を浴びた。
同作は、2009年に流行した新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)をモチーフに、日本に「キャメル」という新型ウイルスが入ってきたとき、どのような騒動が起きるかをシミュレーションした小説だ。
そこで描かれるのは、政府と厚労省が空港での検疫を強化する「水際作戦」にこだわった結果、渡航歴のある人物でなければPCR検査が受けられなかったり、「国内初の感染者」の家族が地域コミュニティでの居場所を失ったりといった混乱の数々。
これらがあまりにも現在のコロナ禍に酷似しているとして、話題を呼んだのである。
(Carl Court/Getty Images)
その海堂氏が、このたびいち早く「世界初の新型コロナウイルス小説」の刊行に踏み切った。
『コロナ黙示録』(宝島社)と題された同作は、『チーム・バチスタの栄光』をはじめとする海堂作品でおなじみの架空都市「桜宮市」を中心に展開する。
だが、そこで描かれるのは、もはや「架空のウイルス騒動」ではない。われわれがまさに今直面している事態が、小説の中でも進行する。そして、同作の全編を貫くのは、コロナ禍を悪化させた「現政権」に対する強い憤りである。
想像を超える出来事が現実世界を侵食している今、海堂氏が「小説」という形式で提示しようとしているものは何なのか? コロナ時代における「フィクションの役割」について聞いた。
海堂 尊(かいどう・たける)
1961年、千葉県生まれ。第4回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、『チーム・バチスタの栄光』にて2006年デビュー。同シリーズは累計発行部数1000万部を超える。
誰も、過去を覚えていない
──今回の新型コロナウイルスの流行について、『ナニワ・モンスター』との類似を、どのようにご覧になっていましたか?