[ワシントン/ジュネーブ 29日 ロイター] - 世界貿易機関(WTO)は、8月末にアゼベド事務局長が1年の任期を残して退任した後、正式な後任が決まるまでの暫定的な事務局長を任命しない公算が大きい。米国が自国出身の事務次長を事務局長代行に就任させるよう「ごり押し」したため、収拾が付かなくなったもようだ。事情に詳しい複数の関係者が29日明らかにした。

当初はリーダーシップ不在の事態を避ける必要から、WTO加盟各国は8人の候補者による次期事務局長選挙を行う間、事務局長代行を選出する予定だった。事務局長代行の候補に上がっていたのはそれぞれ米国、中国、ドイツ、ナイジェリア出身の事務次長だったが、加盟国の間ではドイツのカール・ブラウナー氏が無難に選ばれるだろうとの予想が広がっていた。

ただ6人の関係者はロイターに、米政府が自国のアラン・ウォルフ氏を事務局長代行に据えることを要望し、事態が複雑化。元WTO高官も「米国が自国出身者の起用を主張し、中国と欧州がそれに待ったをかけた」と説明した。

その結果、4人の事務次長はそのままの職務を続けることに落ち着いた形で、31日に開かれるWTO加盟国の会合で正式決定される見通しとなった。

正式な次期事務局長は11月7日までに指名される見込みで、米大統領選の結果を踏まえて選出することができる可能性もある。