「欧州最多の死者」汚名返上へ 英が第2波対策次々

2020年7月26日 06時00分
 【ロンドン=沢田千秋】英国でマスク着用やインフルエンザワクチンの提供など、新型コロナウイルス感染の第2波に備えた対策が続々と講じられている。抜本的な対策の見直しとなるが、ジョンソン首相は24日、「死者と家族に報いる最善の方法は、未来に向け準備することだ」と述べ、第1波での失敗を糧に「欧州最多の死者」という汚名返上に懸命だ。

小売店でのマスク着用が義務付けられた24日、ロンドン中心部ではマスク姿の買い物客が目立った=沢田千秋撮影

◆マスク着用を義務化

 国内人口の85%を占めるイングランド地方で24日、公共交通機関に加えて小売店でもマスク着用が義務化された。ロンドン中心部で買い物中の会社員ギズ・ワヘマさん(26)は「マスクは息がしづらくて快適じゃないけど、普通の生活に戻るために必要とは思う」と嘆息した。
 そもそも、英国は世界有数のマスク懐疑派だった。ハンコック保健相は「マスクの感染防止効果は小さい。科学的に明らかで政府方針は変わらない」と何度も発言してきたが、180度転換した。

◆イングランド全員にインフルワクチン

 さらにジョンソン氏は同日、ロンドン東部の病院で「(イングランドの)全員にインフルエンザワクチンを提供する」と宣言。新型コロナの第2波が予想される冬季、ピークが重なるインフルエンザ患者を減らし、医療崩壊を防ぐ狙いだ。

◆ジャンクフードのCM制限

 自身が新型コロナで集中治療室に入院した経験を踏まえ、「英国は欧州諸国より太り気味」「減量は新型コロナのリスクを減らす」とも指摘。午後9時までジャンクフードのテレビCM禁止など、肥満対策を講じる方針という。
 ワクチン開発でも「世界をリードしている」(ジョンソン氏)と自負。約1000人対象の臨床試験で効果を上げた英オックスフォード大のワクチンに、政府は8400万ポンド(約113億円)を追加助成し、実用化に向けた研究加速を後押ししている。

24日、ロンドン東部の病院を訪れたジョンソン英首相=AP

 マスクを巡る朝令暮改や大胆な新策の背景には、4万5000人以上の死者を出した反省がある。一時、政府は集団免疫の獲得を模索したため、都市封鎖が遅れた。結果、感染拡大によって封鎖の解除も遅れ、大きな経済的打撃を受けた。英統計局によると、イングランドの抗体保有率は6月末時点で6.3%。集団免疫に必要な6割には遠く、抜本的な対策見直しは不可欠だった。
 ジョンソン氏は24日、英BBC放送のインタビューで、死者拡大の責任を問われ「当初、ウイルスが無症状の人から人へうつると知らなかった」と認めたが、マスク導入や封鎖の遅れは「科学者の助言に従った」と弁明。「いずれ検証される時が来るだろうが、今、人々が求めているのは対策だ」と主張した。

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