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いま見ても流麗!? 1980年代の日本車クーペ5選

かつて一斉を風靡した国産クーペを小川フミオが振り返る!
トヨタ TOYOTA ソアラ SOARER 日産 NISSAN レパード LEOPARD ホンダ HONDA レジェンド LEGEND スバル SUBARU アルシオーネ ALCYONE 三菱自動車 ギャランΛ エテルナ
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クーペは、余裕ある時代の産物だ。ゆたかな経済状況下で、いいクルマが出来る。あるいは、ユーザーがゆたかな気持でいる市場から、いいクーペが出てくるといってもいいかもしれない。でもなにはともあれ、クーペっていい。

1980年代の日本製クーペは、成長して成熟へと向かう自動車産業の様子を教えてくれる。いま観ると、なつかしいだけでない。作り手の意欲を感じさせるものが多い。

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そもそも、馬車の一車型であるコーチのコンパクト版として誕生したのがクーペだ。キャビンが小さくて、ホイールベースが短くて、軽快なスタイルを売り物とした。

欧米の自動車界では、クーペはさまざまな車型をあらわす言葉として使われる。もっとも一般的なのは、2ドアで2人乗りあるいは2プラス2のパッケージを持つクルマを指す。フルオープンに対するハードトップボディで、ルーフが後端に向かってなだらかに下がっていくことがクーペの条件である。

というわけで、クーペは、軽快に見えて、かつ洒落ている。日本のメーカーは不得意そう? でも、冒頭述べたように、1980年代は、けっこうがんばったものだ。ここでは、いまでも”これ、いいじゃない”と評価したくなる5台をピックアップしてみた。

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(1)トヨタ「ソアラ」(2代目)

1981年の初代ソアラ登場は一大事件だった。当時愛読していた自動車誌各誌が、日本もついにここまで、と大騒ぎしたのを私はよくおぼえている。

1986年に登場した2代目は、なんとなく地味だった。2.8リッターエンジンにデジタルメーターなどの技術的内容を誇ってセンセーションを巻き起こした初代のインパクトには及ばなかったせいだろうか。3.0リッター直列6気筒ターボエンジンにエアサスペンションなど、遜色ない内容だったのに……。

理由はおそらく、キープコンセプトに見えたスタイリングによるものだったはずだ。私がもし作り手だったら、”ちょっと待ってくださいよ”と、言うだろう。

初代同様、デジタルメーターを採用。

2代目ソアラは、プレスドアを用い、リアクオーターウィンドウはあえて小さくするなど、初代のコンセプトは継承。しかし、ガラスはすべて3次曲面にとお金がかかっていたし、インテリアも(初代とことなり)米国車コンプレックスから脱した独自のラグジュアリーを追求していのだ。

操縦しても、初代からの進歩は明白だった。2.0リッターツインターボエンジン搭載車のほうはパワフルさをことさら強調。それも個性なのだけれど、やや落ち着かなかった。しかし、3.0リッターのトップモデルはたっぷりしたトルクを活かして低速から力強く、速度に関係なく操縦を楽しめた。おとなっぽい、というかんじだったのだ。

フロントシートはヘッドレスト一体型。

車重は1.5tあったので、当時はやや重いなぁと思ったものだけれど、いま乗ったら、軽快に感じそうだ。4675mmの全長に対して1335mmの全高はバランスもよく、クーペとして完成度が高い。

当時、最上級車種は500万円になんなんとした。高嶺の花である。でも、トヨタ自動車が気合いを込めて開発したラグジュアリークーペだけに、ぜひ中古車市場で再会してみたい。それなら近づけそうだから。

(2)日産「レパード」(2代目)

市場では失敗だった2代目レパード。1980年に登場した初代は、強烈と表現したくなるスタイリングコンセプトだった。2ドアハードトップと、4ドアハードトップの同時発売で、車高自動調節機能からワイパー付きアウトサイドミラーにいたるまで、新しい技術がテンコ盛りである。

1986年に登場した2代目は、スタイリングにおいていきなり大きく路線変更。イタリアのカロッツェリアが手を貸したんじゃないか? と、当時思ったぐらい、端正なプロポーションを持つクルマに変わった。劇的な変化だ。

初代レパード。

当時、話題になったワイパー付きアウトサイドミラー。

いまの眼で振り返ったら、初代はキワモノ的なデザインであるのに対して、2代目はクーペとしてスタイルは完璧だ。微妙な太さでバランスがとられたリアクオーターピラーを観ると、マセラティ「ビトゥルボ」(1981年)やカロッツェリア・ベルトーネのボルボ「780」(1985年)を連想するほどである。

全長4680mmとそれなりにサイズ的にも押しだしが効いていて、プロファイル(サイドビュー)でみても、フロントからみても、バランスがよい。ただしフロントマスクは上品すぎるというか、個性にとぼしい。惜しい。

2代目は2ドア・クーペ のみの設定。

写真のインテリアは、マイナーチェンジ後。

レザー仕様も選べた。

それにライバルのトヨタ・ソアラはこのときエアサスなどを搭載しており、マーケティング上の武器にも不足があった。結局、セールスで太刀打ちできなかったのだ。

ただしここで書いてきたように、スタイリッシュなボディデザインはいまでも古びていない。米国車然としたインテリアも、当時は「ちょっと古いなぁ」と、思ったものの、いまはある種の個性として好ましいとすら感じられる。

(3)ホンダ「レジェンド・クーペ」(初代)

1985年にホンダ肝煎りで発売された全長4810mmの大型高級セダン「レジェンド」。全幅を大きくできない5ナンバー車の制約のなかで太いタイヤを履かせるための方策であるブリスターフェンダーを、このような大型ボディに採用したことに是非はあるものの、エレガントさでトヨタや日産のプロダクトとは一線を画していた。

2ドアハードトップは、1987年に登場した。おなじレジェンドであるものの、たんなる2ドア化ではない。独自開発モデルとして、セダンより55mmも短いホイールベースを持っていたのだ。

専用の2.7リッターV型6気筒。

リアルウッドを使ったインテリア。

ベージュのレザーシートも選べた。

前輪駆動方式と組み合わされたエンジンは、セダン用の2.5リッターでなく、専用の2.7リッターV型6気筒。リアサスペンションの形式も、セダンは当初ストラット式であったのに対して、2ドアハードトップはダブルウィッシュボーン式である。

短めの前後長のルーフに、前傾したリアクオーターピラーの組合せ。ピラーは細く見せており、低いボンネットなどとあいまって、ラグジュアリー路線の2ドアハードトップとして、繊細なイメージがセリングポイントだった。

米国で大ヒットしたモデルであるものの、スタイリングは欧州的な雰囲気だった。どこにも破綻を見出せないデザインで、いま乗っていても洒落ているだろう。

(4)三菱「ギャランラムダ/エテルナラムダ」(2代目)

小型フォード「マスタング」みたいなおもむきがあったけれど、1980年の発売から1983年に終了するまでのあいだ、あまり街中で見かける機会がなかった三菱ギャランラムダ(販売系列によってはエテルナラムダ)。

1976年登場の初代ラムダは、デザイナーががんばって内外装を仕上げたモデルだった。角形4灯式ヘッドランプが並んだフロントマスクを持つ2ドアボディで、Tバールーフふうのリアクオーターピラーや、ラップアラウンドリアウィンドウなど細部にも凝っていた。

2代目はホイールベースが15mm延びるいっぽう、全長は80mm切り詰められて凝縮感が増していた。スタイリングも、初代は小技が効いていたものの、ボディが太く見え、ボテッとした印象がつよかったのを、前後にすっと流れる直線的ラインが強調された。

おなじ1980年に発表された4ドアである「ギャランシグマ」とともに、「ランサーEX」(1979年)に通じる直線基調のラインだ。それでも無機的にならず、ボディ面には緊張感があり、上手にまとめられたデザインである。

2555ccの「2600ロイヤル」がラインナップの頂点に設定されていたものの、当時の三菱車の売り物はターボチャージャーによるパワー。ラムダも1981年には2000GSRターボが設定された。

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「ギャランGTO」(1970年)にはじまる三菱のハードトップの系譜につながるモデルだった。ラムダは、当初はエレガントなスペシャルティクーペとして登場したものの、ターボなどで若々しいイメージが強調されるように。

ラムダは後席にもちゃんとおとなが乗れるパッケージをもっていただけに、スペシャルティクーペの分野でソアラやレパードに対抗できるまでに”成長”できなかったのは残念だ。

いっぽう、スポーティなイメージでも、おなじ三菱車のラインナップにおける、「ランサーセレステ」(1975年)や「コルディア」(1982年)など、2プラス2クーペの若々しいイメージも獲得できなかった。

ラムダのポジションはだんだん難しくなっていったことは想像に難くない。「スタリオン」(1982年)を後継とし、姿を消してしまった。スタイルも、実用的なコンセプトもよかったのだが、三菱にはバケモノといわれるぐらいの販売力を誇ったパジェロがあったから、メーカーも情熱をもてなかったのかもしれない。そこは残念。

(5)スバル「アルシオーネ2.7VX」

SUBARUが手がけると、プロダクトはひと味ちがう。そんな印象を裏書きしてくれたのが、1985年登場のアルシオーネだ。実験車のような強烈なウェッジシェイプを持つ2ドアの4人乗りクーペである。

日本発売の前に「XT」として米国で発売されたことが、当時は大きな話題になった。すべてのピラーをブラックアウトしたフローティングルーフといい、Lの字をさかさまにしたような3時30分の位置の2本ステアリングスポークといい、なににも似ていないデザインがとにかく印象的だった。

駆動方式は前輪駆動か4輪駆動かを選べたし、電子制御のエアスプリングや、4輪オートレベリング機構など、メカニズムは凝りまくっていた。エンジンは当初、1.8リッター水平対向4気筒ターボで、のちに2.7リッター水平対向6気筒が設定された。

VRターボ(AT車)には、急加速時、急制動時、雨天時に、アクセル、ブレーキ、ワイパー連動で、自動的に4輪駆動に切り替わる 「AUTO-4WD」 システムを搭載。1987年のマイナーチェンジで追加された2.7VXには、前後輪への駆動力配分を自動で変えていく 「電子制御アクティブトルクスプリット4WD(ACT-4と名づけられていた)」 が、組み合わせられていた。

このように、メカニズムもスタイリングはユニーク。エレガントなスペシャルティクーペでもなく、スポーツカーでもない。ジ・アルシオーネとしか呼ぶしかない。このあとのSVXは高性能スペシャルティの名にふさわしかったものの、アルシオーネの強烈なキャラクターもまた、魅力を失っていない。