「生きながら人生の墓場、国会閉幕は奴隷解放」霞が関はなぜ疲弊・劣化するか
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今から20年前のことですが、何度も苦情電話を受けたことがあります。1回の電話につき、40分くらい対応し、その間は一切の業務ができませんので、チーム内での回り持ちをしていました。大学を出てまだ5ヶ月目くらいの頃に、長い間電話で怒鳴られた後に、「これから飛行機で離陸して、霞ヶ関に体当たりするぞ」と言われた時のことは今でも鮮明に覚えています。
現在のSNSだと、このような極端なコミュニケーションと取る方は、全体の0.5%くらいだと言われています。当時の私の場合は、受けた苦情電話の半分くらいが、同一人物からのものでした。さらに窓の外を見ると、毎日、交差点に立って、拡声機で政府の対応を何時間も批判を繰り返している方がいました。また、街宣車も建物を回りを巡回していました。
当時は、代表電話にかかってきたご批判は政策を担当している部門がそのままお受けし、政策の説明はするものの、反論はせず罵詈雑言もそのまま受け止めるという方針でした。苦情対応のトレーニングを受けることもなく、精神的にかなり追い詰められます。きっと今もそうなのではないかと思います。
霞ヶ関の場合、人手不足になると、機構定員要求をして、例えば、10名のチームを11名にするのに、通常、1年半くらいかかります。そのため、基本的には、現有のリソースで泊まり込んで現場を死守するしかありません。
ショックを受けたのは、2007年にイギリス政府で働いていた時です。100年ぶりに銀行での取り付け騒ぎが発生したのですが(それは1年後のリーマン・ショックの序章でした)、10人規模のチームが、1ヶ月で4チーム新設されたのです。財務省内でメンバーを公募し、私の同僚の一人も、「この危機対応に貢献し、成果を上げたい」と言って進んで応募し、異動していきました。
危機に対しては、戦力の逐次投入は禁物です。また、苦情対応は専門のスタッフが行うなどして、専門知識やスキルに合わせて分業し、適材適所を図るべきだと思います。それが霞ヶ関では非常に難しいことは十分承知しているのですが、このままだと現場が崩壊していくことになりかねません。悲痛ですね。官僚の方々の恒常化した激務ぶりは、心底気の毒に感じます。
大学来の友人も含め、直接のお知り合いは、個々には非常に高いパブリックマインドを持ち、なおかつ極めて優秀な方が多いと感じるのですが、集団としてはこういう状況に陥ってしまっている状況を見聞きするに、なんとも悲しい。
大学4年生の冬学期、法学部の授業にいらした人事院の方から、なぜ官界を志望しなかったのかというアンケートを取られたことがありますが、常人には志す理由が見つからないと、ド正直に回答した覚えがあります。
一般の事業会社で働いていれば、報われる機会が多々あったであろう人たちが高い志を持って働いているのですから、せめて建設的な業務に取り組める場であることを願います。「霞が関では、苦情電話がそのまま現局の政策担当部署につなげられる。こうした電話を各課の若手が取ったら、対応にそれこそ1時間コースです。一番被害にあっているのは厚労省。年金設計のプロはお客様対応のプロではない。企業であればマニュアルを整備しますが、役所にはこうした苦情処理のシステムが無いので、まず体制そのものを変えていかなければいけません」