[ヒューストン 20日 ロイター] - 米石油大手・シェブロン<CVX.N>は20日、米石油・天然ガス生産会社、ノーブル・エナジー<NBL.O>を約50億ドルで買収すると発表した。新型コロナウイルス感染拡大を受けた原油価格急落以降で、米エネルギー業界の買収案件としては最大規模となる。

原油価格の急落を受けて、多くのエネルギー企業の株価は大きな打撃を受けており、豊富な資金力を持つプレーヤーにとっては魅力的なターゲットとなっている。

シェブロンは昨年、米石油・ガス開発アナダルコ・ペトロリアムに対する330億ドルの買収案を取り下げたほか、新型コロナを受けて早期に支出削減に取り組み、今年第1・四半期末時点の保有キャッシュは85億ドルだった。

買収は株式交換で実施する。ノーブル株の評価額は1株当たり10.38ドルと、ノーブルの17日の終値に7.5%上乗せする水準。ノーブルが抱える債務も含めると、全体の買収額は約130億ドルになる。

エンベラスのM&Aアナリスト、アンドリュー・ディットマー氏は、石油・ガス案件を巡る慎重な見通しを反映してシェブロンは「控えめなプレミアム」を支払っていると指摘した。

買収手続きは第4・四半期に完了する見通し。完了時点でノーブルの株主は新会社の株式約3%を保有する。ノーブルの時価総額は約7カ月前は約120億ドルだった。

ノーブル買収によりシェブロンのシェール資産はコロラド州のデンバー・ジュレスバーグ(DJ)盆地、およびテキサス州西部とニューメキシコ州にまたがるパーミアン盆地で拡大。ノーブルがイスラエル沖に保有する天然ガス田「リバイアサン」も手中に収める。

シェブロンは昨年、アナダルコの買収を試みたが、シェブロンを上回る買収案を提示した米エネルギー大手オキシデンタル・ペトロリアム<OXY.N>に競り負けた経緯がある。

エドワード・ジョーンズのアナリスト、ジェニファー・ローランド氏は、シェブロンはノーブル買収を通じ、シェールと長期資産の双方を取得できると指摘した。その上で、今回の案件によって業界再編が進む可能性は低いと述べた。

レイモンド・ジェームズのアナリスト、パベル・モルカノフ氏は、ノーブル買収に対抗案が出てくる可能性は低いと指摘。シェブロンがアナダルコに330億ドルを提示したのに対し、ノーブル買収額は50億ドルと比較的小規模だとし、他の買い手は別の買収先を模索するほうが容易だろうとの見方を示した。

シェブロンによると、北海ブレント先物<LCOc1>が1バレル=40ドルにとどまると想定した場合、ノーブルの買収で年間約3億ドルの経費節減が可能になる。

ノーブル株は年初から17日までに約60%下落した。この日の終値は5.4%高の10.18ドル。シェブロンは2.2%安の85.27ドルで引けた。

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