ウイルスのパンデミック(世界的大流行)が発生して何カ月もの月日が経った今、IBMではアジア太平洋とヨーロッパの一部のオフィスが(出社人数を減らして)再開しているが、アメリカと中南米のオフィスは、必要不可欠な職務に就いている人以外は在宅勤務のままだ。
ライトによれば、同社の従業員の多くが3月以降は出社しておらず、仕事上の協力はデジタルツールに頼っている。中には、今後もう出社しない働き方を選ぶ者もいるかもしれない。「従業員に選択権と決定権を与えている」と彼女は言う。
世界中の企業で同じような会話が交わされている。アジアとヨーロッパの多くの地域では、新型コロナウイルスの新規感染者数が減ったことを受けてロックダウンが解除されているが、米各州の活動再開はまだ段階的なものにとどまっている。それらの地域にある企業では、オフィス再開に向けた戦略を模索し続けており、これらの企業がリスクを理解し、その対策を行うのを手助けするためのコンサルティング企業やソフトウェアも出現している。
だがウイルスがなくならない限り、オフィス再開にはリスクがつきまとう。従業員が職務中に感染するのを防ぐには、科学に基づく感染予防策を考える必要がある。正しい道を進むには、専門家のアドバイスや米疾病予防管理センター(CDC)のような組織の示すガイドラインを参考にするのがいいだろう。

ステップ1:評価する

オフィスのレイアウトや方針について変えるべき点を知るには、どのような活動が最もリスクが高いかをきちんと判断する必要がある。その答えは企業やそのオフィスがある場所、オフィスの使い方によっても違ってくる。
たとえば、クライアントや社外のゲストを迎えることが多いオフィスならば、従業員とゲストが接触する場所に注力することになるかもしれない。従業員同士が1日に何時間も互いに近い距離で座っているオフィスでは、ほかの戦略を検討することになるかもしれない。
「悪魔は細部に潜む」と、ジョンズ・ホプキンズ健康安全保障センターの上級アナリストであるルシア・マレンは言う。「各企業は、業務の中で従業員同士がどのような方法でやり取りすべきかを徹底的に学び、それを基に戦略を作り直す必要がある」
オフィス周辺のコミュニティーにおける感染率も考慮に入れるべきだ。
「各企業には、オフィス周辺地域の市中感染の状況を注視し、感染予防策を実施すると同時に、希望者には引き続き在宅勤務を推奨または許可するよう促したい」と、感染症疫学者のサスキア・ポペスキュは言う。
米各州は概して、日々の感染率や死亡率などのデータを公表しており、企業にとってこうしたデータは役に立ち得る。また各企業は、従業員が暮らす地域に関するデータも考慮に入れてもいいだろう。
この段階では、各企業が独自にリスク基準を設定することも必要だとマレンは言う。自社に関連のある感染者数がどれぐらいに達したら、より制限のある方針に戻る(あるいは移行する)かという基準値だ。
オフィス再開前に水際対策を設定し、それでも感染者が増え始めた時にどうするかを考えておくべきだ。その基準値は、企業の規模やそのほかの方針によって異なる場合があるだろう。

ステップ2:行動を起こす

オフィスのどの側面が従業員にとって脅威となるかが分かったら、企業はその脅威に対処するための方針導入を始めることができる。その対応は企業によって大きく異なるものになるだろうとマレンは指摘する。
中には、勤務開始時間をずらしたり、特定の曜日だけ出社勤務にしたりするなど、一度にオフィスを使用する従業員の数を減らすための方針を検討しているオフィスもある。
そのほかのオフィスでは、従業員同士の接触方法を変える方法を模索している。休憩室を封鎖したり、配置を変えたり、席の近い従業員同士の間にバリアを設けたりしている。ほかにも空調システムをアップグレードさせて換気を良くしたり、手指用消毒剤を増やしたり、人が頻繁に触れる表面の清掃頻度を増やしたりするなど、それ以外の側面についても変革を行っている。
より直接的なウイルス対策もある。多くの企業が健康に関する調査票を従業員に送り、オフィスに来る前にウイルスにさらされた可能性がないかを調べている。オフィスを訪れるゲストに、接触追跡が可能なように受付シートの記入を求めるところもある。
また一部の組織(特に大学)では、従業員や学生を対象に検査を行っているが、マレンはこれについて、検査の頻度と検査結果についてのきちんとした理解が重要だと指摘する。
ゲストや従業員の体温チェックを検討しているところもあるが、このやり方の効果はまちまちだ。「これも数多くの対策のひとつだが、これだけに頼ることはできない」とポペスキュは言う。
理解しておくべき重要なことは、Covid-19の対策に確実なものはないということだ。「一発逆転を狙えるような、それ自体で劇的にリスクを減らせるような方法はない。だがこうした数多くの対策を組み合わせることで、リスクを大幅に減らすことはできる」とマレンは言う。

ステップ3:フォローアップ

だが方針を決めるだけでは不十分で、各企業は従業員がきちんとそれを守るようにしなければならない。その方針に無理なく従えるか、管理が重要だとマレンは指摘する。
「企業側は自社の方針について可能な限り透明性を高めるべきだ。また従業員がウイルスにさらされた可能性がある時、あるいは感染した場合にどうやってそれを報告すべきかを明確に示し、全ての人に必要な情報が行き渡るようにすべきだ」
ライトはIBMの新たな方針の順守について、会社が情報提供に尽力し従業員との信頼関係を築いているため、IBMでは何も問題なく取り組みが進んでいると言う。
さらに企業側は、在宅勤務または病気休暇についての方針をアップデートし、体調が悪い人やウイルスにさらされた人が、雇用主にそれを報告しても金銭的な影響、あるいは仕事への影響を恐れなくて済むようにするべきだ。
最新の研究をチェックし続けていく必要もある。リスクの高い状況について、研究者たちの理解が変わる可能性もあるからだ。
「これは複雑でリソースに頼る部分が大きく、変化し続けている問題だ。今後、人々が戻ってくれば新型コロナウイルスの感染者は増えるだろう。そのための計画を用意しておくことが必要だ」とポペスキュは言う。
「究極を言えば、全てのリスクを排除することはできない。だができる限りリスクを減らし、従業員に対しては、職場でもその外でも、どうやってリスクを減らせるかを伝えていくことが重要だ」
元の記事はこちら(英語)。
(執筆: Alexandra Ossola、翻訳:森美歩、バナーデザイン:月森恭助)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with HP.