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久保建英を危険にするポジション。同点ゴール演出にアシスト未遂、ドリブルよりも脅威になるのは…

リーガエスパニョーラ最終節、オサスナ対マジョルカが現地時間19日に行われ、2-2の引き分けに終わった。14試合ぶりに先発を外れた久保は59分から出場すると、次々とチャンスを演出。ドリブル成功率の高さが注目を集めているが、それよりも相手の脅威となるプレーがある。(文:加藤健一)

text by 加藤健一 photo by Getty Images

途中出場から存在感を放つ久保建英

久保建英
【写真:Getty Images】

 マジョルカは前節でグラナダに敗れて降格が決まった。リーグ戦再開後の過密日程の中で全試合に先発していた久保建英は、最終節で先発を外れている。

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 GKのマノロ・レイナとベテランのサルバ・セビージャもベンチスタートとなった。クチョ・エルナンデスを出場停止で欠き、中盤の中心選手が不在。マジョルカはなかなか攻撃の形を作ることができない時間が続いた。

 22分にはアドリアン・ロペスのゴールでオサスナに先制を許した。それでも、前半終了間際に左サイドバックのルマーが放った強烈なシュートが決まり、1-1で試合を折り返している。

 マジョルカのビセンテ・モレーノ監督は58分に動いた。セビージャと久保を投入して、4-4-2から4-2-3-1へ陣形を変更。2列目は右から久保、アレイシ・フェバス、ダニ・ロドリゲスという並びに変わった。

 2人の投入をきっかけに、マジョルカはオサスナゴールに迫った。62分にイドリス・ババからの縦パスを久保がダイレクトでアレイシ・フェバスにはたく。フェバスもダイレクトでアンテ・ブディミルに送ってチャンスにつなげている。

 63分には中央のダニ・ロドリゲスからのパスを久保が受ける。GKとDFの間に左足で入れたボールはブディミルが触れることができずにゴールとはならなかった。

 しかし、その直後にゴールが生まれる。サルバ・セビージャのパスをペナルティエリアの角付近で久保が受けると、3人の相手を引き付けて右サイドに展開。シスコ・カンポスがダイレクトで入れたクロスを、ブディミルが頭で合わせた。

 マジョルカはその3分後に失点し、2-2で引き分けている。19/20シーズンは9勝23敗6分の19位という結果に終わった。

久保建英を危険にするポジション

 奇しくもマジョルカは、最後の2試合で同じ昇格組と対戦している。昨季2位で自動昇格したグラナダはUEFAヨーロッパリーグ出場権を手にし、優勝したオサスナは10位でシーズンを終えた。対照的に5位で昇格プレーオフを勝ち抜いたマジョルカにとっては苦しいシーズンとなった。

 指揮官は試合後に「物事がうまく運ばないときも成長する」という言葉を残した。アレハンドロ・ポソは右サイドバックで攻撃性能の高さを証明し、クチョ・エルナンデスはゴールへの嗅覚を見せた。そして最も存在感を高めたのが久保だった。

 厳しいシーズンであっても、ポジティブな要素は決して少なくない。彼らが期限付き移籍であることはマジョルカにとっては惜しい限りだが、この1年間で残したものは決して小さくなかった。

 この試合で印象的だったのは久保のポジションだった。先述した3つのプレーはすべて敵陣のセンターからハーフスペースにまたがるエリアでプレーしている。ゴールシーンは久保が相手を引き付けたことで、ゴール前には2対2の状況が生まれていた。

 今季の久保は、タッチライン付近まで開いてドリブルで突破するシーンが多く見られた。アトレティコ・マドリード戦などではそれが大きな注目を集めたが、そこからチャンスにつながった場面はそこまで多くない。

 抑えられたアスレティック・ビルバオ戦がまさにそうだった。久保がゴールから遠いサイドでドリブルを仕掛けるのは、相手にとってはそこまで怖くない。一方で、ハーフスペースでボールを持たせてしまうと、一転して危険な存在に変わる。

久保建英に本来備わる資質

 セルタ戦では、ハーフスペースでボールを受けた久保を経由して4つのゴールが生まれている。味方のゴールを演出することもあれば、フィニッシュに持ち込むこともできる。今シーズンの久保は、2/3という高い枠内シュート率を記録している。シュートを枠内に飛ばす技術を持つ久保にとって、右よりのミドルレンジからのシュートは大きなチャンスになっている。

 さらに、この試合のゴールのように、サイドに展開することでもチャンスにつながる。ハーフスペースというポジションは久保にとって、様々な選択肢を持つことができるエリアになっている。

 この点で見れば、リオネル・メッシと共通する部分がある。メッシがゴールから遠ざかれば遠ざかるほど、バルセロナの攻撃が停滞しているのと同じように、久保がサイドに流れればチャンスは望めない。

 久保のドリブルは確かに効果的だが、スピードでぶち抜くものではない。ただ、相手を剥がすときには非常に有効で、ラストパスやシュートに持ち込むことができる。狭いエリアでも失わない繊細なボールタッチを持っているので、中央でこそその威力が活かされるのかもしれない。

 Jリーグ時代も得点にかかわるプレーのほとんどは中央でボールを受けている。サイドから切り込んでゴールに関わったプレーはほとんどなかった。これは、スペインでの成長というよりは、久保に本来備わっている資質なのだろう。

 マジョルカでの移籍期間を終えた久保が来シーズン、何色のユニフォームを着てプレーするかはわからない。しかし、マジョルカでの活躍を通じて、獲得を狙うクラブは久保の特徴を深く理解できただろう。35試合に出場して4得点4アシストという数字を残した久保は、20歳になる来シーズンもさらなる飛躍を見せてくれるに違いない。

(文:加藤健一)

【了】

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