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【週末に学ぶ】サウジ王族の「感情」で動いた原油価格
2020/7/18
新型コロナウイルスの流行後、乱高下を見せ、一時は前代未聞の「マイナス価格」を記録した原油価格(WTI原油先物)。7月18日現在、1バレル=40ドル台まで戻してはいるものの、コロナ前の2019年12月と比べると、3分の2程度の水準にとどまっている。
なぜ原油市場は乱高下を繰り返すのか。その背景には産油国のどのような思惑があるのか。そして、今後の原油価格の先行きは。
『原油暴落の謎を解く』などの著書で知られる、エネルギーアナリストの岩瀬昇氏が、原油価格が決定されるメカニズムを「基礎」から解説する。
なぜ原油市場は乱高下を繰り返すのか。その背景には産油国のどのような思惑があるのか。そして、今後の原油価格の先行きは。
『原油暴落の謎を解く』などの著書で知られる、エネルギーアナリストの岩瀬昇氏が、原油価格が決定されるメカニズムを「基礎」から解説する。
2020年に入ってからの原油価格は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり、世界を揺るがすほどの「乱高下」を見せました。
わずか数日間で約3分の2になり、年初の半値にまで落ち込んだ3月頭の大暴落はまだ序の口。
4月20日には、ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)のWTI原油先物が、1983年の上場以来初めてとなる「マイナス価格」、しかも「マイナス40ドル」という価格で取引され、「石油業界のブラックマンデー」と呼ばれるほどの衝撃を与えました。
原油価格は誰が決めるのか
原油価格はなぜ乱高下するのか。
これを理解するには、まず原油価格は誰が決めているのかを知る必要があります。
歴史を振り返ると「セブンシスターズ」と呼ばれた大手国際石油に、長い間価格決定権がありましたが、1973年の「オイルショック」によりOPECが主導権を握るようになりました。
セブンシスターズ:戦後から1970年代まで、世界の石油生産をほぼ寡占状態に置いた、スタンダードオイルニュージャージー、ロイヤル・ダッチ・シェル、アングロペルシャ石油会社、スタンダードオイルニューヨーク、スタンダードオイルカリフォルニア、 ガルフ石油、テキサコの7社のこと。
ところが1986年の「逆オイルショック」を転機に、価格決定機能は「市場」へと移りました。
逆オイルショック:それまで産油国の利害を調整し、減産を主導していたサウジアラビアが、調整役の役割を放棄して増産を宣言したことで、原油相場が急落したこと。詳細は下記。
現在も、原油価格を決めているのは市場です。価格決定権がOPECから市場に移った背景として、次のようなことがありました。
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この連載について
コロナ後に乱高下する原油価格。人びとの生活や企業の業績に直結する指標だが、案外その背景にあるメカニズムは知られていない。そこで本特集では、原油価格に多大な影響力を与える「サウジ」「ロシア」の視点で、乱高下のメカニズムと、それが経済全体に及ぼす作用を読み解いていく。