新型コロナ、日本で重症化率・死亡率が低いワケ
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非常に興味深い論考ではありますが、仮説・仮定とシミュレーションによる結果ですので、即座に首肯しかねますね…
新型コロナが途中から強毒化する…というのは確かなのでしょうか…?
インフルエンザも一部重篤化して脳炎などを来します(サイトカインストームも来しますし、小児科医はときどき経験する病態です)が、そのインフルエンザウイルスが強毒化しているわけではありません。
医学の発展は仮説から生まれますので、さらに検討が進み流行を押さえるヒントが科学的にえられることを期待していますが、まだ『わからない』というしかないのかなととらえています。科学の世界では、AならばB、BならばCがそれぞれ真だったとしても、AならばCは真ではないということが良くあります。
その昔、β遮断薬と呼ばれる薬は心臓の収縮力を弱める、心臓の収縮力を弱めると心不全の人に悪い影響をもたらす、という三段論法が信じられ、避けられていました。しかし、AならばCを直接検証したら結果は全く逆となり、β遮断薬はむしろ心不全に好影響を与えていたことが分かりました。この結果から、現代の医療は、三段論法の結果とはまるで逆のことを行っています。
このような三段論法は説得力を持ちやすいですが、論者に都合の良いデータだけが選択される傾向があり、バイアスのリスクが高くなります。科学の基本に忠実でいるならば、「AならばC」が真実かを知るためには、それを直接証明するための研究が必要ということになります。それを欠いている現状では、やはり「分からない」というしかないようにも思います。
例えば、この論説では、公衆衛生策について、ロックダウンをしなかったと政策や介入の「大きさ」「強さ」だけで話を進めていますが、実際には、公衆衛生策はそれを遂行する人の遵守率が大きく結果に影響します。
また、公衆衛生策開始のタイミングの議論も重要ですが、その違いについても述べられていません。あるいは、アジア諸国以外にも感染者や重症者が低く抑えられている国がありますが、それらの国との共通点はあるのでしょうか?アジアや日本だけという視点では見逃しているものがあるかもしれません。
ただし、仮説としてはとても重要な示唆で、今後の研究に繋がるものです。同時に、このような仮説がメディアに流れることで、これが仮説であることを飛び出し、皆が信じ込むリスクが高いとも思います。
日本でもタスクフォースが立ち上がり、現在遺伝的な背景や免疫機序との関連を含めて研究が進行しています。それらはまさに、AならばCを直接証明するための研究です。免疫の部分に言及しますと「自然免疫力」という用語は学問的には存在しません。また細胞性免疫は獲得免疫に含まれる応答です。自然免疫力を数値化してモデルを組んでいらっしゃいますが、自然免疫力の定義と数値化の方法までは記事には掲載されていないようでした。アカデミックペーパーではありませんので、紙面の都合や読者の理解を優先して描写しきれない面もあるかと思います。きちんとした学問的議論をするには、今後発表されると期待される論文をベースに、より詳細になされるべきだろうと考えます。シミュレーションは専門でないので間違っているかもしれませんが、まずはシンプルなモデルを作り、パラメーターや条件分けをして洗練されていく印象を持っています。この記事からは「新しい考え方・可能性・仮説第一弾が登場したぞ。今後どうなっていくのだろう?」と一旦受け止めるのがいいのかなと思います。
自然免疫だけでウイルスが排除できる人がいるという仮説はあり、ありえる話かもとは思うのですが科学的な立証が難しいです。抗体陰性といってもあくまでキットで測定不能ということであって、検出感度以下で存在するのかもしれません。獲得免疫が動いてい"ないことの証明"を実験動物でなく、人で倫理的な問題がない方法でどう示したらいいのか自分の中にアイディアがありません。獲得免疫系にはキラーT細胞による応答もあり、こちらが活躍しているのかもしれない。さらには、以前に感染した風邪コロナウイルスに対する免疫記憶が機能しているかもという仮説やHLAの違いが影響しているのかもしれないという仮説もあり、免疫学の視点で確からしいものがわかるようになるには、さらなる研究成果の報告が待たれます。