2007年、デザイナーのシェーン・オリバーとラウル・ロペスが米・ニューヨークで立ち上げたラグジュアリーストリートブランドの「フッド・バイ・エアー」(HOOD BY AIR)が、3年間の活動休止を経て、再び戻ってくることを発表した。
フッド・バイ・エアーといえば、そのぶっ飛んだデザインや、過激なランウェイ・パフォーマンスで賛否両論を巻き起こしたカルト的ブランドだ。ファッションのみならず、地元ニューヨークのLGBTQコミュニティや、アンダーグラウンドなナイトライフ・シーンを支え、ユースカルチャーを牽引し、歌手のリアーナやラッパーのエイサップ・ロッキーのお気に入りブランドとしても名を馳せた。2017年に突然の活動休止を宣言して以来、オリバーはヘルムート・ラングやロンシャンとのコラボなど、個人の活動に注力してきた。
7月14日に公開されたオフィシャルサイトの声明は、この数年、クリエイティブ業界とリアルなカルチャーの溝がさらに深まり、“ジェントリフィケーション”(註1)によって、「新しい、そしてこれから世にひろまっていく可能性にあふれたアイデアが住み着く物理的な場所が、もはや存在しなくなっている」として、「フッド・バイ・エア(HBA)はそうしたアイデアにとっての“ホーム”のような場所になるであろう」と述べている。
註1:再開発や文化的活動などによる都市の高級化=美化によって、もともとの住人などが立ち退きを強いられる現象。
新たなフッド・バイ・エアーは、そんな場所や拠点を奪われたアイデアを守り、それらをファッションやアート作品などに結実させる「公共施設」(institution)として機能することを目指すという。とりわけ、有色人種のクリエイターとLGBTQコミュニティとコラボレーションを行うことで、彼らをサポートするのが目的である、とされる。
この「公共施設」は以下の4つのプラットフォームから成るという。
フッド・バイ・エアー(Hood By Air):コレクターズ・アイテムになり得るファッション・プロダクトの発表イベントやプロジェクトを通して、その年のプロジェクトテーマを決める部門。
HBA:衣服商品を消費者に直接、販売するブランドで、コレクションの従来のシーズンごとの発表スケジュールやマーケット主導型の卸し売りシステムに依存するビジネスモデルにはしたがわない。
ミュージアム(Museum):フッド・バイ・エアーのオリジナル・コレクションの現在進行形のアーカイヴ。若い非白人の招聘デザイナーによる再解釈コレクションを発表することもあるという。
アノニマス・クラブ(Anonymous Club):若いアーティストやミュージシャン、ビジネスパーソンなどを招待し、オリバーとコラボレーションを行うことによって、彼らの才能を伸ばすプラットフォーム。
再始動のキックオフを飾るのは、モバイル決済アプリ「キャッシュ・アップ」と組んだオリバーがデザインしたキャッシュカードと限定のチャリティTシャツ。利益は黒人とLGBTQコミュニティを支援する団体(註2)へ寄付される。7月16日(米時間)に発売されるそうなので、オフィシャルサイトとインスタグラムをチェックしておこう。
註2:Black Trans Femmes in the Arts、Emergency Release Fund、Gays & Lesbians Living In A Transgender Societyの3団体。
オフィシャルサイト:https://hoodbyair.world/
インスタグラム:https://www.instagram.com/hoodbyair/