私たちの生活や働き方を変化させ、広範な影響を及ぼしている新型コロナウイルスの危機の中で、責任あるリーダーを誰もが求めている。
各企業の労働力、文化、リソースはそれぞれに異なる。確かなのは、経営幹部のリーダーたちは、これまでにないプレッシャーにさらされているということだ。顧客だけでなく従業員もまた、あなたの行動に目を向け、責任が重くのしかかっている。
ビジネスの概観は、新型コロナウイルスの流行前から変化していた。
2020年の社会、経済、環境の問題は、パーパス(企業の存在意義)、人材、持続可能性、そして世界的な利益を重視したリーダーシップと責任に対する新しいアプローチを必要としている。
CEOが従業員の雇用維持のために給与を辞退したり、現場の労働者の給与を引き上げたりするなど、現在のパンデミック下ですでに賢明な対応が無数になされているが、リーダーが責任と思いやりを持って導くためにできる5つの重要な行動がある。
これらは単に私の意見ではなく、アクセンチュアが10か国15業界の1万5600人以上の労働者を対象に行った調査に基づいている。調査では、身体、精神、人間関係という3つの基本的な分野で労働者がリーダーに求めているものを明らかにした。この5つのニーズはどんな時にも当てはまるが、危機においては重要性が増す。

①慈悲や思いやりの心を持つリーダーを昇進させる

企業の多くの有能なリーダーは、ビジネスに関する見識に基づいて今の地位を築いており、必ずしも人間的な側面が優れていたからではない。しかし、従業員は、会社に未来を切り開く力があると確信したがっていて、また幹部が従業員への慈悲と思いやりを重視することを望んでいることが調査で分かった。
指導的な立場には、ビジネスのニーズと人的ニーズを両立させることができ、両方に秀でた人材を就かせるべきだ。そうした人々こそ、従業員に最も注目してほしい人材のはずだ。

②不要な仕事をなくす

いまチームが必要としているのは、柔軟性、特に異なる働き方を認めてもらうことだ。3か月前には「緊急」だったことも、今では無意味かもしれない。長時間の会議は過去のものとなり、「あるに越したことはない」程度のプロジェクトは、本質的で将来を見越したプロジェクトに取って代わられる。
従業員は高齢者の介護や育児で仕事が中断され、自宅では必需品の確保も困難で、健康面の問題を抱える可能性もあり、連続して何時間も働くことは不可能かもしれない。
マネジャーは、感情的知性(EI)と人々の個々のニーズに基づき、就業規則をより柔軟にしなければならない。それについてマネジャーを迅速に教育することで、チームの適応力を高めることができる。そして、模範を示して導くことが極めて重要だ。

③ヒエラルキーを排除する

もし従業員が部署横断の働き方やアジャイル型のチームで仕事をすることに慣れていなければ、今こそ行動を開始する時だ。あなたが求めているのは、顧客と大きな社会のための正しい成果であり、縦割り化した組織ではそれは達成できない。
職務の専門性や肩書きではなく、スキルに基づいてチームを選ぼう。その能力と問題解決力に驚かされるはずだ。これは、デジタルネイティブの若手社員が、会社と従業員を前向きに飛躍させるイニシアチブを率先して行うチャンスだ。

④データだけを投げるのではなく、ストーリーを語る

人は大きなストレスがあって不明確な状況のときには、ストーリーに意味を見出し、最も反応するものだ。生産性とメンタルヘルスを支援するには、職場の先輩や部署のトップまであらゆるレベルのリーダーからの一貫した、透明性のある、明確なコミュニケーションが不可欠だ。
従業員は孤立した状態にあると、独自のストーリーをつくり、それが不安と混乱を引き起こす。従業員には収益性やコストに関するデータだけではなく、ストーリーを伝えよう。
ストーリーは、従業員が物事を解釈し、その意味を理解し、次のステップを知るために切実に必要としているものであるべきだ。

⑤「今」の危機に「次」に向けた行動を止めさせない

1日2時間、組織と従業員が未来に向けた準備をできるよう集中して取り組もう。自分が緊迫した状況を無視しているように感じるかもしれないが、2時間を賢く使うことで、会社を健全な状態に保つことができる。
素晴らしいアイデアの多くは、逆境や困難な時を経て生まれる。従業員に輝かしい未来に向けたイノベーションを起こすチャンスを与えることで、彼らのしなやかな強さを維持する助けとなる。
上記の行動は、当然ながらより大きな枠組みの一部として行われなければならない。現在の最優先課題は、働く人々の仕事を維持することだ。
また、企業のパーパスや価値観をすべてのコミュニケーションやイニシアチブに組み込みこむことで、隔離やソーシャルデイスタンスといった措置が取られている中でも、今強く必要とされている帰属意識や連帯感を従業員に与えることも重要だ。
リンカーン・フィナンシャルのリサ・バッキンガムは、この目的意識と連帯感についてこう話した。「人生には重要な瞬間が多くあり、中には他の時よりつらい瞬間もある。そうしたつらい時期を乗り越える手助けをしてくれた人のことは、忘れないものだ」
いま蔓延している人的な問題への対処と組み合わせた実践的で戦略的な行動が、危機の中で必要とされる責任あるリーダーシップだ。
こうした行動は、組織がパンデミックの最中に持続性を保ち、従業員が将来の課題に適応する用意をする助けとなるだろう。
元の記事はこちら(英語)。
(執筆:エバ・セージ・ギャビン、翻訳:中丸碧、バナーデザイン:月森恭助)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with HP.