ライフネット生命の"Re-IPO":海外募集による新株発行及び株式売出
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読み応えのある勉強になる記事です。
1. 経営指標転換の経営努力(PL目標からEuropean Embedded Value(EEV)目標へ)
・(私は門外漢ですが)保険は将来長期に亘って収益が獲得される一方、コストは最初に発生するそうなので、今期のPL利益を最大化するには顧客新規開拓は行わないほうが良い結論となってしまう(※余談ですがCustomer Life-Time Value把握の重要性と通底)
・会社の事業価値とは将来に亘って獲得するキャッシュの現在価値なので、今期PLの最大化は将来利益の大幅縮小に繋がってしまう
・ライフネット生命がPLを経営指標としたことにより、事業価値最大化と会社の走っている方向性に乖離が生じてしまった(その結果成長が停滞した)と推察される
・EEVは直観的には、この将来価値を保険数理的に現在価値に換算したもの。事業価値最大化と会社の経営指標(走る方向性)がマッチしたということでしょう
・経営努力と書いたのは、走る方向性の意識改革は決して簡単ではないから。きっと地道な意識改革努力があってのことかと
ここから記事本題
2. 海外機関投資家向け募集
・ライフネット生命は成長投資のために資金調達が必要だったが、オーバーハング懸念と流動性不足のスパイラル(塩漬け)、成長停滞、投資家の理解不足などにより株価が低迷。これが第ニの死の谷
・類似企業があまり無い中、潜在的価値(エクイティストーリー)を評価してくれる投資家、即ち海外優良機関投資家に当たることとした
3. エクイティストーリー
・グロース:ライフネット生命はスタートアップ(グロース、成長株)。保有契約増大には多大な投資が必要だが、投資による事業価値への寄与は、EEV拡大として定量的且つ分かりやすく捉えられる
・トランスフォーメーション:140億円のオファリングにより、マザーズでも流動性ある(海外機関投資家が入りやすい)銘柄となる
4. 今後
・海外機関投資家は、小さ目でもグロースには投資するところも出てきている(大型でないと無理、ではない)
・活用すべき事例は多々ある一方、事例が皆無なのは純粋に発行体の資本市場に対する理解不足・先例欠如が大きい模様
・今回を契機として、エクイティストーリーが合致する企業による海外向けオファリングはより広まっていくでしょう。それが本件の重要性日本のスタートアップ・エコシステムにとっても、大きな案件だったと思います。上場後、8年間の苦労。そこから再出発(Re-IPO)を決意し、実行に移した経営陣に深い敬意を示すと共に、この経験をエコシステムに還元すべく、noteを書きました。
noteでも書いていますが、これはオンライン生保に限った話ではなく、上場を目指す/ポストIPOスタートアップに一般化できる話だと思います。如何に、上場後の「第二の死の谷」が深く、誰でも陥ってしまうものなのか。そこから抜け出し、再成長を目指すのが大変なことなのか、と痛感します。
上場企業が、何度もチャレンジし、再成長できるチャンスを失ってしまえば、上場市場や上場企業の意味はないとすら思います。
一方で、チャンスを手に入れるのは、簡単なことではなく、周到な準備と、難しい判断をする意思決定力、判断したことを実現する実行力が必要なことは言うまでもありません。
今後とも、成長スタートアップの重要な局面に少しでもお力になれればと思います。このような局面をご一緒することで、お互いに成長し、日本のスタートアップエコシステムの意思決定や実行力の向上に寄与できればと思います。ライフネットの大規模調達に関するシニフィアン村上のnote。
上場の目的として資金調達はよく挙げられる名目ですが、調べてみればわかるとおり、マザーズ上場企業が資金を調達する事例は相当限られています。「未上場の方が資金は調達しやすい」と言われる所以です。
この点、ライフネット生命の大規模調達は、Post-IPOスタートアップが資本市場を活用したエポックメイキングな事例と言えるのではないでしょうか。
Disclaimer: なお、本件に関し、シニフィアン社は同社に対する経営アドバイザーとして関与しています。