【徹底解説】苦境のEUが「日本」に期待する理由
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1年後になれば、人命の面でコロナ禍で最も大きなダメージを受けたのはインドなどの南アジアということになっているでしょう。ヨーロッパは比較的耐え抜くことができた地域、ということになっているでしょう。
ヨーロッパが比較的ましであるというのは、医療リソースのストックによる人命へのダメージについてもですが、経済へのダメージについてもいえることでしょう。
新しく発表されたシンガポールの第2四半期GDP成長率は-14%、年換算で-42%でした。おそらく、大きな国内市場を持っている国ほど経済的なダメージは少なくなる、ということになるでしょう。中東は全般的に危機的ですが、特に金融センターのレバノンから壊滅しています。UAEもひどいことになるでしょう。世界中から投資を集める、といった成長モデルが最も機能しなくなってきています。
結局、世界的な景気後退にあって、それでもまだ強いのは中国、それに米国、ということになるでしょう。日本は、かなりましな部類ではないでしょうか。
EUという共同体が成立したのは、経済的な統合、通貨と市場の統合によって競争力のある経済圏をつくりだす、というのが最大の目的であったといえます。その効果は、今だからこそ発揮されうると考えられます。
ただし、この状況下で、ドイツ政府がドイツ企業に公的資金を注入することによって、ドイツの一人勝ち、という従来からの傾向に拍車がかかることは避けられません。
ドイツ、企業向け補助金突出 EU全体の4割強
コロナ下、単一市場ゆがめる恐れ
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61451600T10C20A7FF8000/
EUが巨大市場であるとはいえ、域外にも市場とサプライチェーンを求めるのは当然であるので、日本は無難なパートナーでしょう。WTO体制下の自由貿易が機能しなくなっていく以上、国家間、地域ブロック間で、市場とサプライチェーンを共有するための外交が、経済を方向づける大きな要因になっていきます。細谷雄一先生のEU情勢解説。とても読み応えのある、そしてわかりやすい論考だと思います。
EUがコロナ後に「戦後最大の危機」とも呼ばれる事態に直面しているのは、「自由」と「連帯」という2つの価値が、根本的に脅かされているから。しかしEUも初動の失敗を取り返すべく、金融緩和から財政ルールの緩和、失業対策まで、あらゆる支援策を実施している。これは、単なる「EU崩壊論」にとどまらない、バランスの取れた指摘だと思います。
結論部分で細谷先生は、日本とEU、日本とイギリスの連携の可能性について触れています。なんだか明治期の「日英同盟」を思い出します。昨日の船橋先生の記事もそうですが、米中という二大勢力の中で、ASEANや欧州との連携を強めていけば、案外「第三極」としては有望なのかもしれません。日本同様ロイヤルファミリーを持つイギリスやオランダなど歴史的にも良好な関係を維持する国がEUには多いですし、環境対策への遅れなど政策面では日本に対する批判があるも政治的には強い警戒感を抱かなくて済む日本はイギリスやEUにとって極めてくみしやすい相手だと思います。
この空白期間に乗じて、というと嫌らしい感じもしますが、単なる無難でアンパイな相手ではなく、必要不可欠な相手となるよう、ここは日本の存在感と積極的な役割を示したいですね。