(ブルームバーグ): 官民ファンドの産業革新投資機構(JIC)は8日、1号ファンドを設立すると発表した。ベンチャー企業が対象で規模は1200億円。2018年9月の発足から約2年、経営を巡る混乱を経てようやく本格稼働する。

1号ファンドにはJICが100%出資する。運営するJICベンチャー・グロース・インベストメンツの社長には、JIC子会社INCJでベンチャー投資担当マネージングディレクターを務める鑓水英樹氏が就任する。

運営期間は12年間で、当初5年間を投資期間とする。1社当たりの投資金額は10億ー50億円。主な投資対象として、情報通信やフィンテックを含めた金融、運輸・小売り、製造業など15の分野を挙げた。

また、JICの久村俊幸最高投資責任者(CIO)は同日の会見で、9月末をめどに大企業などを対象とした新たなバイアウトファンドの立ち上げを目指していると述べた。こうした自前のファンド以外にも、リミテッドパートナー(有限責任投資家)として民間運用会社に数十~数百億円単位で投資する。

新型コロナウィルス対策の政府の第2次補正予算で、JICに政府保証枠が1兆5000億円追加された。JICの横尾敬介社長は、コロナ禍関連では打撃を受けつつも収束後に競争力が保てそうな企業に長い目で投資をしていくとの考えを示し、いわゆる「ゾンビ企業」救済ではなく産業競争力強化につながる支援が前提とした。

JICは産業革新機構(旧INCJ)の後継組織として発足したが、18年12月に前社長の田中正明氏らが所管の経済産業省との対立で退陣。1年間後任社長が決まらないなど機能不全が続いていた。

(第4、5段落に会見の内容を追加します)

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