【10分教養】外国人に「日本酒の魅力」を語れない、あなたへ

2020/7/15
NewsPicks編集部が、本の要約サイト「フライヤー」とコラボし、話題の書籍の要約をお届けする連載「水曜日は読書」。
今回は『教養として知りたい日本酒』(PHP研究所)だ。
疲れが溜まってきた「水曜日」は、読書で気持ちを切り替えよう。(4394文字)

日本酒はこんなにも「奥深い」

日本酒は米、水、麹を原料に造られる。米は全国各地で900種以上が栽培されているが、そのうち酒造りに特化した米を「酒造好適米」といい、120種以上の銘柄がある。
米が違えば当然香味は異なるが、同じ米を使っていても、同じ味わいの酒になるとは限らない。
例えば「精米歩合」と呼ばれる精米の度合いによっても、香味は変わってくる。精米の度合いは、食用米の場合90%程度だが、酒造りに使う米は少なくとも70%、吟醸酒では60%に規定されている。吟醸酒でいえば、米の表面を40%削るということである。
また、水が違えば飲み口も変わってくる。酒造りに使う水は「仕込み水」と呼ばれ、日本酒の成分の8割を占める。水に含まれるミネラルの含有量によって、味は大きく左右される。
ミネラルが豊富に含まれる硬水ではどっしりした辛口に、軟水では口当たりの軟らかい甘口の酒になる傾向がある。加えて、アルコールの発酵には酵母が必要になるが、この種類によっても香りは異なる。
さらに興味深いことに、米の品種、精米歩合、仕込み水、酵母が同じであっても、造り手が変われば味わいも変化する。杜氏と呼ばれる酒造りの最高責任者は全国各地におり、それぞれに流派がある。
流派によって酒造りは変わるし、同じ流派でも造る人によって味は違う。酒は造り手の人格を反映するものなのだ。
日本酒とは非常に繊細な手造り製品である。製品としてできあがったあとも、保存状況により熟成されたり劣化したりする。さらには冷酒、常温、人肌燗、ぬる燗、熱燗と、飲む温度にも風味が左右される。柔軟性に富んだ、奥深いアルコール飲料といえる。
(写真:Toshie Kurosawa/iStock)

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