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 新型コロナウイルスの感染拡大防止のために、ITを活用しようという動きが広がっている。日本政府は2020年6月19日、スマートフォンのBluetooth機能を使って人と人の接触状況を追跡・確認できる接触確認アプリ「COCOA」の提供を始めた。

 アプリで接触したと判定された人の中に新型コロナ陽性判定者がいた場合、その事実を通知し、本人にも感染リスクについて注意喚起する仕組みだ。アプリのダウンロード数は7月1日までに約489万件に達したという。

 接触確認の効果を出すためには人口の6割程度の普及率が必要とされる。だがCOCOAのダウンロード数489万件は、人口比でわずか4%弱である。

 今のままの勢いでダウンロードされ続ければ、計算上は半年後に6割に達する。ただ、今は物珍しさでダウンロードする人も多いが、効果を実感できなければ失速する可能性が高い。Bluetoothによるスマホのバッテリー消耗を嫌って、利用をやめる人もいるかもしれない。

 筆者は提供開始と同時にアプリをインストールしたが、感染拡大防止に役立つイメージをまだ持てないでいる。アプリの普及・利用に膨大な労力がかかるだろうからだ。

 COCOAでは陽性判定者が自分で感染確認の事実を登録しなければならない。もし筆者が感染したら必ず登録したいとは思うが、スマホを操作できないほど重症になれば登録できないだろう。アプリをインストールしても、感染確認の事実を登録したくなかったり、そもそも登録のための操作方法を知らなかったりする人も多いはずだ。

中国は感染防止にアプリをフル活用

 最近、中国政府の新型コロナ対策におけるアプリ活用について知る機会があった。ビッグデータ分析システムを主力事業とする米Teradata(テラデータ)が、中国政府のプロジェクトを支援しており、その説明を聞いたのだ。テラデータは主に携帯電話会社からの移動履歴収集や、データの解析などの面で支援している。

 筆者は、日本は中国のやり方から学べることが多いと考えるようになった。感染拡大が早かった中国は早期にアプリ活用に着手した「先進国」であるのは事実だ。アプリの効果だけではないだろうが、現実に新型コロナの抑え込みがある程度成功していることは見過ごせない。

 米ジョンズ・ホプキンス大学の集計によれば、2020年7月2日時点で中国の新型コロナによる死者数は約4600人。米国の約12万8000人、ブラジルの約6万人などに比べて格段に少ない。中国政府の情報開示に対する疑念もあるが、少なくとも米国のような感染爆発に至っていないのは事実だろう。