[東京/ベンガルール 6日 ロイター] - ソフトバンクグループ(SBG)<9984.T>が、1000億ドルを運用する傘下のビジョン・ファンドに対する取締役会の監視を強める考えがないことが、複数の関係筋の話で明らかになった。物言う投資家として知られる米エリオット・マネジメントは同ファンドも含めたガバナンス(企業統治)強化を求めているが、これには応じない構えだ。

ソフトバンクGはここ数カ月で2兆5000億円規模の自社株買いを打ち出し、社外取締役を増やすなど、エリオットによる要求をビジョン・ファンド以外で満たしてきた。

ビジョン・ファンドは米シェアオフィス大手のウィー・ワークなどの新興企業への投資で運用成績が悪化。この結果、ソフトバンクは2020年3月期に過去最大の赤字に陥った。しかし、同ファンドの経営陣の構造はほとんど変わっていない。

関係筋がこれまで明らかにしたところによると、エリオットはソフトバンクGに対し、取締役会の中に委員会を設け、ビジョン・ファンドの投資プロセスを監視し、支えるよう求めていた。

事情に詳しい関係者の1人によると、ソフトバンク側は委員会の設置を拒否。幹部らは 投資案件は既に経営首脳が吟味しており、30億─50億ドルの案件は大口出資者のリミテッド・パートナー(LP)の精査を受けていると主張しているという。

ソフトバンクGはコメントを控えた。エリオットはコメントの求めに応じていない。

ビジョン・ファンドの運用成績の不振を受け、ビジョン・ファンド2号の資金集めは難航、第1号の大口出資者であるサウジアラビアの政府系ファンド、パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)とアラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ政府系ファンド、ムバダラからの資金集め計画も頓挫している。

PIFとムバダラからコメントは得られていない。

ビジョン・ファンドの運営責任者はラジーブ・ミスラ氏で、同氏の昨年の報酬は2倍に増えた。ソフトバンクGの孫正義会長兼社長も同ファンドの経営陣に名を連ねている。

関係筋の1人によると、インド出身のミスラ氏は同ファンドの「顔」となっており、成績不振にもかかわらず、運営責任者としての地位は盤石だという。