いま、世界中のビジネスリーダーは、従業員の懸念や不安に対処しながら、ビジネスを前進させ、従業員の変化するニーズを中心に据えた新たな方針をつくることのバランスを取ろうとしている。そしてこれまでにない形で神経をすり減らし、「どうすれば従業員が必要とするリーダーになれるか」を学ぼうとしている。
興味深いことに、この危機にあっても、従業員の基本的なニーズは本質的には同じだ。だからこそ組織にとっては人中心のアプローチを大々的に示す絶好の機会だ。
私のチームの研究によると、人々は「自分が評価されている」と感じ、「組織の将来とその中での自分の位置について自信を持ちたい」と思っている。
また、帰属意識を持ち、リーダーを信頼し、焦点を置くべきものが明確で、仕事において安定感を持つことを望んでいる。私たちが世界的なパンデミックに直面しているかどうかにかかわらず、こうした願望は変わらないだろう。
今こそ、職場での人々のニーズを真に重視した新しい戦略の描き方を見つける時だ。実際に取り掛かるための方法をいくつか紹介しよう。

従業員の状況を確認し続ける

興味深いことに、私がクライアントから最もよく聞く懸念の1つは、いま従業員の調査を行うのは部下の仕事を増やし、余計なことのように感じるというものだ。しかし、従業員は調査を、組織全体が大きな変化にあるこの重要な時に、リーダーであるあなたが自分の意見を重視しているサインと認識するだろう。
従業員は自宅でそれぞれ異なる環境にある。私たちにとっては、人々のフィードバックを集め、動向を特定することが、チームメンバーとのつながりを保つのに役立っている。
現在はリンクトインの傘下であるグリントの私のチームは、世界中の100社以上から危機関連の従業員のフィードバックを250万件集めた。リーダーが定期的にチームの状況を確認すると、以下のような傾向が見られる。
・従業員の90%が、会社が従業員とのコミュニケーションをうまく行っていると感じている
・従業員の91%が、影響を最小限に抑えるためにチームが適切な予防策を講じていると感じている
・従業員の85%が、自分の仕事に必要なリソースがあると感じている

自分のやり方が正しいか調べ続ける

マネジャーがコミュニケーション戦略の強みとギャップを明らかにできれば、全体的に回復力の高いビジネスモデルにつながる。
ビジネスリーダーであるあなたは、おそらくストレスの負荷と共に仕事量が増加しているだろう。一から新しい仕組みをつくるリソースがなければ、既存のコミュニケーションをを生かせばいい。
たとえば従業員向けのプラットフォームにバーチャルな提案箱を置き、既存のコミュニケーションチャネルにそのリンクを投稿することもできる。これなら手がかからず、従業員は特にニーズが急速に変化し得る現在のような状況下で、継続的にフィードバックやアイデアを提供できる。

コミュニケーションがしなやかさ(レジリエンス)を生む

あなたはすべての答えを知っている必要はなく、従業員もあなたにそれを期待していない。しかし、今のような危機的状況でマネジャーを支援するシンプルな方法は、彼らが従業員の考えを把握して、より意味のある、体系化された会話ができるようにすることだ。
マネジャーがコミュニケーション戦略の強みやギャップ、あるいは特別なサポートが必要になりそうな場所や役割を明らかにすることができれば、回復力の高い全体的なビジネスモデルにつながる。
マネジャーが従業員のフィードバックを参考にして、適切な対話ができるようにすることも大切だ。定期的に状況を確認することは、チームの健康を積極的にサポートするための最善策の1つだ。

マインドフルになる

仕事中に自分の健康状態を確認する機会を従業員に与えよう。昨今のニューノーマルは個人的にも仕事的にもストレスがたまるもので、従業員がリセットし、マインドフルになるために必要な柔軟性、ツール、時間を提供することが重要だ。
マインドフルネスが生産性から記憶、免疫の健康にいたるまで、全般的な幸福に与える影響を示す研究や資料は無数にある。しかし、適切な出発点を見つけるのはとても難しい。私がたびたび実践する3つのシンプルな行動を紹介しよう。これらが人とチームの成長に役立ってきた。
【内省する】
大掛かりなことをする必要はない。仕事の合間に2分間窓の外を眺めたり、5分間ストレッチをしたり、少しの間だけスマートフォンやパソコンから離れるといったシンプルなことでいい。現時点の最重要事柄のリストを頭の中で作るのにとても役立つはずだ。
【つながる】
困難な時期に対処するための、独自の社会的なサポートシステムを確立しよう。励ましやリソース、指導、帰属意識をもたらしてくれる人々のネットワークを持っていると、肉体的にも精神的にも健康であることは科学的に証明されている。
【優先順位をつける】
苦難の時は、優先順位を見直すきっかけにもなる。ただ、すべてのタスクが緊急であるように感じさせることもある。緊急でも必須でもないプロジェクトや活動、プロセスの優先順位を率先して下げることで、人々に寛大さを示す絶好の機会だ。従業員が強く必要としている安心感を与え、全員の優先順位を一致させるのにも役立つ。
世界中のリーダーが、いま必要なコミュニケーション、リーダーシップ、マネジメントスキルを向上させるためオンライン学習に目を向けている。2月から3月にかけて、リンクトイン・ラーニングのコースを受講しているディレクター以上の人の数は41%増加し、これは、他のすべてのレベルの従業員よりも前月比でいち早く増えた。

互いにできるだけ多くを学び合う

今は支え合うことがかつてなく大切だ。2月以降、リンクトインでは「#コロナウイルス」というハッシュタグをつけた対話が「#予防」「#安全」「#健康」などのトピックと共に28倍以上増え、メンバーらは啓発のためのコンテンツを共有している。
働くチームのメンバー同士も、助けを求めたり、チームコミュニティーが互いに有益なアドバイスを提供するためのフォーラムを開くと良いかもしれない。うまくいっている戦略や、もちろん、期待通りには進んでいない戦略だって共有してほしい。
新型コロナウイルスの流行の最中にチームを率いるのは、困難で圧倒されてしまう。誰にとっても未知の領域だ。しかし、それはまた、組織にとって従業員がいかに重要かを示す新たな機会を与え、私たちが共にあることを認識させてくれる。
(執筆:Justin Black、翻訳:中丸碧、バナーデザイン:月森恭助)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with HP.