【世界ランキング】東京はナンバーワンになれるか

2020/7/10
「命と経済を守っていく東京、世界の中での都市間競争に打ち勝つ東京を進めたい」
7月5日の選挙で圧勝、再選を果たした小池百合子・東京都知事は、開口一番、こう抱負を語った。
「都市間競争で打ち勝つ東京」というのは、2016年の初当選から掲げている目標であり、都知事としての「宿題」でもある。
写真:つのだよしお/アフロ
ロンドン、ニューヨーク、パリといった大都市に比べて、目下の東京はどのような位置にあるのか。
コロナ禍、オリンピックによって、東京の地位は上がるのか、下がるのか。
森ビル系のシンクタンク、都市戦略研究所は「世界都市総合力ランキング(GPCI)」を毎年発表している。
東京都もベンチマークにしていると言われるGPCI作成の責任者、市川宏雄・明治大学名誉教授に、「アフターコロナの都市競争力」の本質を聞いた。

「なぜ勝たなければならないのか」

市川 1980年代以降、世界中で急激に第三次産業の比率が高まり、グローバリゼーションの進展によって、労働者と資本が国境を越えて動き出した。
これは、大都市間の移動です。魅力が大きい、リターンが大きい都市じゃないと、お金も人もやってこない。GPCIの順位が高い都市には、より多くの投資が流れ込んでくる。
今、国の競争というのは、国内の主要都市がどれだけ力を持っているかということに、シナリオが変わってきています。
大都市の活力が失われれば、国力が衰退していく。国として生き残るためには、都市間競争に勝たなければならないのです。
市川宏雄(いちかわ ひろお) 明治大学名誉教授

1947年生まれ。早稲田大学理工学部建築学科、同大学院修士課程、博士課程(都市計画)を経て、カナダのウォータールー大学大学院博士課程修了。(財)国際開発センター、富士総合研究所(現・みずほ総合研究所)などを経て、1997年に明治大学政治経済学部教授に就任。現在、日本危機管理防災学会会長、日本テレワーク学会会長、大都市政策研究機構理事長など多数の要職を兼任している。

国内では多くの都市政策立案に携わり、東京都との関わりも25年近くにわたる。森記念財団の都市戦略研究所で、研究責任者として2008年より世界都市総合力ランキング(GPCI)を発表。東京と競合する世界の主要都市について、グローバルな視点から比較研究を進めている。
解説 2008年から始まったGPCI最大の特徴は、「総合力」に着目したことである。
「経済」「研究・開発」「文化・交流」「居住」「環境」「交通・アクセス」の6分野で採点しており、合計では70項目もの評価指標がある。
2008年当初の1位はニューヨークだったが、12年にロンドンに逆転された。その後はロンドンの独走が続いている。
また、東京は16年にパリを逆転して、4位から3位にランクアップした。しかし、最新の19年ランキングでは、パリが再び追い上げている。
「4強」の競争は激しい。

「この1年はサバイバルゲームになる」

市川 オリンピックは、順位変動の大きな要因です。
ロンドンがニューヨークを逆転した12年は、ロンドン五輪が開催された年。オリンピックで弾みをつけたんですね。
そして、13年に東京五輪招致が決まり、ちょうど同じころに始まったアベノミクスの勢いもあって、16年には東京がパリを逆転して3位に浮上します。
パリが4位に落ちた直接のきっかけは15年の大規模テロ事件ですが、24年のパリ五輪開催(17年に正式決定)で上昇トレンドを取り戻してきました。
かたや、東京はアベノミクスが失速し、改革の雰囲気がなくなっています。東京とパリの再逆転があるかもしれません。
当面の焦点は、ブレグジットによってロンドンがどこまで順位を落とすか。しかし、追い上げる立場のニューヨークも東京も悩ましいところです。
写真:ロイター/アフロ