自宅の7カ所を順番に移動する

「できれば10分以上続けて座らないでください」
カリフォルニア大学バークレー校環境デザイン学部のガレン・クランツ名誉教授はそう警告する。
私たちの背骨は「S」の形で体を支えるように設計されている。しかし標準的な椅子は「C」の猫背を強いて、腹部と背中の筋力を低下させ、首の痛みの原因になる。
『The Chair: Rethinking Culture, Body, and Design(椅子:文化、身体、デザインの再考)』の著書があるクランツは30年前から、仕事中はこまめに姿勢を変えることの大切さを訴えてきた。
1つの場所で仕事をするという概念を捨てて、できれば7カ所くらいを順番に移動するといい。在宅勤務が増えている今、7つのスポットを最大限に活用する方法について彼女のアドバイスを紹介しよう。
1. キッチン
テーブルの高さがあるアイランドキッチンは、ホームオフィスに最適だろう。スツールの端に腰掛けると、骨盤が少し前に傾いて、腹筋と背筋が鍛えられる。足を自由に動かしやすいから、座りっぱなしの仕事の人に多い心臓発作や癌のリスクを減らすことにもつながる。
バースツールがなければ、乗馬の姿勢をイメージしたホーグのカピスコという椅子を試してみよう。テーブルの高さは、箱の上にノートパソコンを置いて調節することもできる。パソコンの画面は目の高さに、キーボードは肘の高さにする。同じ姿勢は長くて1時間まで。
2. ダイニングルーム
サリサドルチェアーは骨盤と背骨を正しい位置と角度で支え、股間が押しつけられない。「性器に体重をかけて座ることがどのくらいのダメージになるのか、科学的なことはわかりませんが、生理学的な代償はあるでしょう」と、クランツは言う。
3. 書斎
ペーパーレス時代に、もうデスクは不要。ラウンジチェアは背骨がS字型に保たれて、膝が曲がるため背中の負担が軽減されると、クランツは言う。
ストッケのデュオバランスやヴァリエールのグラビティバランスがおすすめだ。予算が許すなら、ラフマのフュチュラをぜひ。
「私は肘掛けにパソコンを固定して、(リクライニングさせると)目の前に持ってこれるようにしています。その姿勢で確定申告を済ませたところです」
どうしてもデスクが必要なら、高さを調整できて、座っても立っても使えるものがいいと、クランツは言う。ランバーのデスクやフォーカル・アップライトなどがある。
4. リビング
2019年に学習管理システム会社のタレントLMSが行った調査によると、リモートワーカーの約3分の1がリビングで野営を張っている。クランツのおすすめは、ル・コルビュジエがデザインした寝椅子、シェーズラウンジだ。
「あなたの体は、模倣品とオリジナルの区別はつかないでしょう」
アルヴァ・アアルトのスタッキングスツールは、ノートパソコンや書類、コーヒーを置くサイドテーブルにぴったり。クリップ付きの譜面台は本を持つ必要がないので、読書のスタイルが一新する。
5. 寝室
タレントLMSの調査では、リモートワーカーの6人に1人が寝室をオフィスにしている。
背中に固めのフォームウェッジ(ヨガやストレッチの際に背骨を支えるピロー)を、膝の下に枕やクッションを置いて、ラウンジチェアにもたれるような姿勢をつくる。全身を支える低反発素材のピローもある。
6. 子ども部屋/ゲストルーム
たまにはパソコンの前を離れること。ブレインストーミングや電話に集中したいときは、立ち上がって歩き回るといい。
7. 床
ときどき座禅を組んでみよう。あぐらをかくように座り、膝を前について、お尻を座布団に乗せる。電話をしながら床に寝そべると、驚くほど気持ちがいいはず。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Arianne Choen、翻訳:矢羽野薫、写真:Photoboyko/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with HP.