コロナ時代の「世界的ベストセラー本」が教えてくれること

2020/7/4
まるで預言者のように、新しい時代のムーブメントをいち早く紹介する連載「The Prophet」。今回登場するのはイタリアの作家、パオロ・ジョルダーノ氏だ。
新型コロナウイルスが猛威を振るったこの春、世界中でさかんに読まれた本がある。パオロ氏のエッセー集、『コロナの時代の僕ら』(早川書房)だ。
同書に収められている27本のエッセーが綴られたのは、今年の2月末から3月頭にかけてのこと。イタリアでの累積感染者数が、ほんの数日のあいだに1000人、3000人と拡大していった時期だ(その後、同国では本格的に感染が拡大し、イタリア全土が移動・外出制限の対象となった。7月1日現在、累積感染者数は24万人に達している)。
ロックダウン中の4月5日、人の気配が消えたミラノの街(Alessandro Grassani/The New York Times)
今から見れば、パンデミックの「序章」に過ぎなかったこの時期に、パオロ氏は周囲から「過剰反応している」と見られながらも、世の中で起きている変化の一つ一つを真正面から受け止め、「忘れたくないこと」を記録に残していった
パオロ氏は、「小説家」であると同時に、素粒子物理学の博士号を持つ「科学者」である。つまり、「科学的な知性」「胸に落ちる言葉」の両方を持ち合わせている。
だからこそ、『コロナの時代の僕ら』は、理解し難い状況の中にあってパニックに陥りかけた人たちが、現状を落ち着いて捉え直し、不安から脱するための手引きとして、世界中(28カ国で緊急出版された)の読者から熱く支持されたのだろう。
自然の摂理として、パンデミックはいずれまた必ず起きる。そのときに、今回の危機の中で体験したこと、気づいたことを、われわれはどのように役立てるべきか? そのヒントをパオロ氏に聞いた。
パオロ・ジョルダーノ(Paolo Giordano)
小説家。1982年、イタリアのトリノ生まれ。2008年、デビュー長編となる『素数たちの孤独』(早川書房)が人口6000万人のイタリアで200万部を突破。同国最高峰のストレーガ賞、カンピエッロ文学賞新人賞など、数々の文学賞を受賞した。
科学への「信頼」を取り戻そう
──『コロナの時代の僕ら』の中に、印象的な一節があります。今の社会では、市民、行政、科学者(専門家)のあいだの「信頼」が欠如していると。三者の関係が機能不全におちいると、今回のような危機において、無用のパニックが発生するとパオロさんは指摘していますね。
こうした状況は、多くの国の人々が経験していることだと思います。この問題を解決するため、各々がどのような努力をすべきだと考えますか?