2020/7/26
【山本康正】最新テクノロジーの知識がなければもう成長できない
京大、東大、ハーバード、三菱東京UFJ銀行、ニューヨーク、グーグル、シリコンバレー、ベンチャーキャピタル……。DNX Venturesのインダストリー パートナー、山本康正氏の略歴には多様なキーワードが並ぶ。
しかし、その軌跡に目を凝らすと、単なるエリートとは違う「意志」が透けて見えるはずだ。その意志とは、「理系と文系」「民間と政府」「日本とシリコンバレー」など異なる分野の架け橋になりたい、というもの。異なる分野をつなぐには、広く、かつ深い知識を学ばねばならない。
キャリアを進めるたびに未知の世界へ飛び込んでいく山本氏の軌跡を追いつつ、働くうえで大事にしている「仕事の哲学」を聞いた。(全7回)
しかし、その軌跡に目を凝らすと、単なるエリートとは違う「意志」が透けて見えるはずだ。その意志とは、「理系と文系」「民間と政府」「日本とシリコンバレー」など異なる分野の架け橋になりたい、というもの。異なる分野をつなぐには、広く、かつ深い知識を学ばねばならない。
キャリアを進めるたびに未知の世界へ飛び込んでいく山本氏の軌跡を追いつつ、働くうえで大事にしている「仕事の哲学」を聞いた。(全7回)
日本は後れをとっている
いま私はシリコンバレーでベンチャー投資を仕事にしていますが、ことあるごとに痛感するのが、「日本はこの分野に関して後れをとっている」ということです。1980年代では日本も米国もベンチャーキャピタル業界の規模は同じでした。
しかし、今では10倍以上の差を米国にも中国にもつけられています。先月、DNX Venturesの年次イベント「B2B Summit」にて明らかになった米大手ベンチャーキャピタルであるセコイアの日本進出も米国ではなく、中国オフィスからの運営です。
おそらく一般の方の感覚では、ベンチャー投資というものは、“何だかよくわからない、謎のベールに包まれたもの”ではないでしょうか。
しかし、もはやすべての企業が、日本だけでなく世界最先端のテクノロジーベンチャー企業を買収しながら成長しないといけない時代になっていると私は考えます。
そのためには文系・理系の別や業界を問わず、「最新のテクノロジーにはどんなものがあり、それを使うとどんなことができるか」について最低限の知識を持たなくてはならない。
今は新型コロナウイルスにより、DX(デジタルトランスフォーメーション)への意欲がかつてないほど上昇しています。デジタルトランスフォーメーションはベンチャーキャピタルととても相性がいいのです。
私はこれから当たり前になりそうなテクノロジービジネスを目利きしているので、どうやって事業をデジタル化するかにおいて、世界の最先端を伝えることができます。
それを経営層などの方にわかりやすく説明するのが、いまの仕事の一つにもなっています。京都大学大学院のエグゼクティブコースや特任准教授として教えています。
この分野に興味がある方は連載の第6回と、拙著『次のテクノロジーで世界はどう変わるのか』(講談社現代新書)、『シリコンバレーのVC=ベンチャーキャピタリストは何を見ているのか』(東洋経済新報社)をご参照ください。
DNX Venturesは珍しいベンチャーキャピタルです。
もともとシリコンバレーのベンチャーキャピタルのメッカ、サンドヒルロードの基礎を作ったウィリアム・ドレイパー氏の息子であり、スカイプ、テスラに初期に出資した老舗ベンチャーキャピタルDFJの創業者であり、ビリオネアであるティム・ドレイパー氏が作った世界中のベンチャーキャピタルのネットワークの一部として、日本企業を支援したいという志を持った創業メンバーで設立されました。
日米どちらにも拠点があり、私が所属するのはシリコンバレー側です。日本にも投資をしますし、米国以外の海外にも投資をします。主な出資者は日本の大企業や、海外の年金も入っています。
現在3号ファンドと、フォローオン投資に特化したファンドを組成し、累計で600億円程度の出資をいただいています。
ベンチャー企業に投資することで、日本の大企業に投資額の年利何十パーセントという利益をもたらすのはもちろんですが、それにプラスして、日本だけでなく世界最先端のテクノロジーベンチャーへの投資により、日本の大企業にイノベーション、今で言うDX(デジタルトランスフォーメーション)を届けることを目指しています。
この連載は「NewsPicks」の主な読者層、20代、30代の成長意欲が高い人向けということですので、その方々向けにメッセージをお届けできればと思います。
京大で分子細胞生物科学を学ぶ
私はもともと理系出身です。「生物学でノーベル賞をとりたい」というシンプルな動機で京都大学に入学し、分子細胞生物科学を学びました。
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この連載について
ビジネスや働き方が多様化し、正解がない時代に、自分を信じて一心に仕事をする人たちがいる。そこにあるのは独自の「哲学」だ。仕事人のヒストリーをたどり、道標となった哲学を浮き彫りにしていく。
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