【CEO独占】SOMPO、天才ピーター・ティールと組んだ理由

2020/7/3
2020年6月19日、SOMPOホールディングスが米パランティア・テクノロジーズへの5億ドル(約540億円)の出資を発表した。
パランティアといえば、ペイパル・マフィアの代表的な存在、天才ピーター・ティールが共同創業した世界的なビッグデータカンパニーである。
10年以上の逃亡生活を送っていたウサマ・ビンラディン容疑者(故人)の居場所の特定に、パランティアのシステムが貢献したというのは有名なエピソードだ。
ゆえに世界中の大企業からラブコールを受けるパランティアが、2019年11月、日本においてパランティア・テクノロジーズ・ジャパンを共同設立した相手こそが、何を隠そうSOMPOだった。
今回はさらに一歩踏み込んで、巨額の出資劇に至ったというわけだ。
【秘録】ピーター・ティール、天才が日本でやりたい事
ここで一つの疑問が湧いてくる。なぜ、パランティアは日本での事業展開において、保険会社の一つにすぎないSOMPOと手を組んだのだろうか?
このビッグディールの経緯について、これまでほとんど口を開いてこなかったSOMPOの櫻田謙悟CEOが、NewsPicksの独占インタビューで、舞台裏を全て語った。
櫻田謙悟(さくらだ・けんご)SOMPOホールディングス グループCEO
1956年東京都生まれ。78年早稲田大学商学部卒業、安田火災海上保険(現・損害保険ジャパン日本興亜)入社。2010年損害保険ジャパン代表取締役社長。12年NKSJホールディングス(現・SOMPOホールディングス)代表取締役社長。15年より現職。
INDEX
☑「哲学」が専門の2人組
☑保険事業の「再定義」
☑Uberの衝撃
☑GAFAにない「リアルデータ」
☑アレックス・カープという男
☑ピーター・ティールと話したこと
☑シリコンバレーは人類を幸せにしたか?
☑パランティアという「化け物」
☑日本市場、20兆円の巨大産業
☑シリコンバレーの「視察」は無意味
☑現状維持とは「敗北」である
「哲学」が専門の2人組
櫻田 始まりは今から2年前、2018年のことでした。
米シリコンバレーに定期的に足を運んでいる中で、「パランティア」という非常におもしろい会社があると、うちの楢﨑(浩一)CDO(チーフ・デジタル・オフィサー)が言うのです。
どんな会社だと聞いたら、世界的なビッグデータ企業で、かくかくしかじかであると。そこに行ってみないかというので、ぜひ行きたいと言って、会いに行った。
その相手こそが、二人のファウンダーのうちの一人、CEOを務めるアレックス・カープでした。
2004年にピーター・ティールらとパランティアを創業したアレックス・カープは1967年米フィラデルフィア生まれ。地元の高校を卒業後にハバフォード大学へ入学し、スタンフォードのロースクールを修了。その後法曹の道には進まず、独フランクフルト・ゲーテ大学の博士課程に留学している(写真:Andrew Harrer/Bloomberg via Getty Images)
そして、2019年の11月にはピーター・ティールも来日して、遂にお会いしました。本当に、この人たちに巡り会えて良かったなと思いましたね。
パランティアが図抜けた会社であるのは説明するまでもありません。エンジニアの集団、しかもスーパーエンジニアの集団ですよね。データサイエンティストの集団であり、人工知能のサイエンティストもいる。
そうしたスーパーエンジニアを束ねているピーター・ティールとアレックス・カープの二人は、実はPh.D.は「哲学」なんです。法律も専門ですよね。
この人たちは、一体何者なんだと。
──しかも、2人の思想は真逆だそうですね。
そうそう。この二人が手を組んだ時からダイバース(多様化)している組織なわけですけど、世界を動かすようなエンジニアたちを集めているトップが、二人ともリベラル・アーツ系であることに、大変興味を持った。
というのも、私自身、第4次産業革命とは何だろうと考えてきたからです。その答えは、たくさんのデータの集まりではあるんですが、同時に重要なのは、それをコントロールする「知恵」なのではないか、と。
つまり、テクノロジーに支配されないための知恵が必要で、その答えを出してくれるのがリベラル・アーツだと思っていた。
ですから、リベラル・アーツの専門家が、エンジニアの集団を率いているというのは、僕らにとって理想的な組織でした。そして、シリコンバレーにおいて、こんな会社は他に見たことがない。
パランティアの社名はSF『ロード・オブ・ザ・リング』に由来。世界の遠く離れた地域と交信したり、未来を見通したりする水晶玉を意味する(写真:David Paul Morris/Bloomberg via Getty Images)
「なんでSOMPOと組みたいの?」と、彼らにも聞いたんです。
すると、保険でも金融でもない、我々が掲げる「安心・安全・健康のテーマパーク」という部分に、どうやら関心を持ってくれたらしい。
彼らは金融や保険をやりたいわけではなくて、そういう新しいビジョンに関心が高かった。
だから、本当に巡り合わせでした。この会社と組めないかと考え始めたところから、全ては始まったんです。