【冨山和彦】戦略は死んだ。大事なのは経営能力と組織能力だ

2020/7/1
日本企業はコロナ恐慌にどう立ち向かうべきか?日本の会社をつくり変えるために必要なことは何か?『コロナショック・サバイバル』に続く、経営共創基盤・冨山和彦氏の新著『コーポレート・トランスフォーメーション』の一部を紹介する。

毎回対峙する「根本的な問い」

カネボウ、ダイエー、そして我が国のフラッグキャリアとして航空産業トップに長年君臨した日本航空。
それ以外にもエレクトロニクス、通信、半導体、液晶、金融、住宅、不動産、外食、宿泊施設など、企業再生の専門家として、ある時は管財人的な立場で、ある時は買収者、経営当事者として、またある時は経営コンサルタント、財務アドバイザーとして、社外取締役として、私たちは数多くの有力企業の栄枯盛衰、とりわけ業界の覇者の交代劇に深く関わってきた。
冨山和彦(とやま・かずひこ)/経営共創基盤CEO。1960年生まれ。東大法学部卒、司法試験合格。スタンフォード大学経営学修士(MBA)。ボストン コンサルティング グループ入社後、コーポレイトディレクション設立に参画。2003年産業再生機構に参画しCOO。その後、経営共創基盤設立。パナソニック社外取締役、東京電力ホールディングス社外取締役。
マスコミ報道などでは、最終局面における色々な問題、病理が顕著に報道され、不正会計や経営者の暴走など、スキャンダラスで固有名詞的な話題に注目が集まり、「まとめ」や「処方箋」には、経営体制を一新するとか、経営者への権力集中を是正するとか、監査機能を強化するとか、お定まりの文句が並ぶ。
最近のカルロス・ゴーン事件も同様だ。
しかし、いわば企業の「主治医」として患者の今後のQOLに責任を持って事案に対峙する立場からは、さらにその背景にある根本的な病原に注目がいくわけで、そこではそんな常套文句、間違ってはいないが表層的な対症療法では、病気は再発するとしか思えない。
ガン、循環器障害、肝機能障害、糖尿病......それぞれ背景には罹患しやすい因子、生活習慣であれ、遺伝子であれ、が存在するはずで、そこまで掘り下げないと、経営的な現実たる本質には到達できない。
かかる思考と観察から毎回対峙する根本的な問いは、次の通りである。