【解説】リモートワークはなぜ「歴史的に失敗」してきたのか

2020/6/30

経験者が語る「苦い記憶」

新型コロナウイルスの感染拡大によってオフィスが封鎖されてから早3カ月。米ビジネス界は「リモートワークとオフィスワークに違いはない」という結論に達した。
大勢の従業員は、通勤時間が数秒間に短縮されたのと引き換えに、残りの仕事人生をZoomやSlackに縛り付けられて過ごすことになるだろう。
しかし、PR会社「RLMパブリック・リレーションズ」のリチャード・ラーマーCEOは、今、リモート化の波に大慌てで乗ろうとしているすべての会社に対して伝えたいことがあるという──「やめておいたほうがいい」。
数年前、ラーマーは自社の従業員に対し、金曜日は自宅で仕事をしてもいいという許可を出したが、リモートワークへのささやかな一歩は惨憺たる結果に終わった。必要なときにスタッフと連絡がつかないケースが頻発し、多くのプロジェクトに支障が出たのだ。
「結局、週末を3連休にしただけのようなものでした」とラーマーは言う。「スタッフ全員が物理的に同じ空間にいたほうが、よほどいい仕事ができると痛感しましたね」
(Alexander Spatari/Getty Images)

悲劇は繰り返されるのか?

IBMも、似たような顛末を経験している。
2009年の時点で、同社では世界173カ国に散らばる全38万6000人の従業員のうち、40%がリモートで働いていた。しかし2017年には収益の低迷に伴い、何千人もの従業員をオフィスに呼び戻すことになった。