2020/7/25

【一休 社長】問題解決に役立つ「データ分析」の方法

Sakaki Jun
一休.com
高級ホテル・旅館やレストランの予約サービスを展開する一休は1998年に設立され、この分野の草分けとして成長。競合激化などにより一時低迷するも、ロイヤルカスタマーに特化し、ユーザーファーストを徹底することで、2012年から再び右肩上がりで業績を伸ばす。
それに一役買ったのは、2012年にコンサルティング会社から派遣され同社の経営に携わり、現在社長を務める榊淳氏だ。
メガバンク時代は金融工学を駆使し、デリバティブ取引などのプライシングを担い、その後、スタンフォード大学大学院でコンピューターサイエンスを学ぶ。ボストン コンサルティング グループを経て、経営コンサルタントとして出合ったのが、一休だ。
社長業は週1日。週4日はデータサイエンティストとして、データ分析やコーディングなど社員業に従事するという変わり種。いかに同社を再成長へと導いたのか。バックグラウンドを振り返りつつ、その独自の経営スタイルを紹介する。(全7回)

アミノ酸サプリは誰に売れてる?

経営コンサルタント時代に、大手食品メーカーの「アミノ酸サプリメント」を手掛けたことがあります。当時、その商品はアスリートとフィットネスジムに通う人をターゲットにしていました。
しかし、アスリートはいかんせん絶対数が少なく、フィットネスジムに通う層はアミノ酸の補給が必要なほど激しい運動をしないことから、市場規模が拡大しないという課題がありました。
まず誰にアミノ酸サプリメントが売れているのかを細かくリサーチしたら、山登りをするシニアに利用されていることが分かったのです。
(写真:Ryosei Watanabe/iStock)
あれはすごく奥深かった。商品だけを眺めていたら、おそらくたどり着かない「答え」でしょう。
これは、マイクロセグメントという考え方です。アミノ酸のサプリメントを使っている人が今どれぐらいいるのかをすべてのスポーツで調べます。
このとき全部のセグメントで利用率0.002%程度だったのが、なぜか山登りだけ0.2%と突出していました。実に全体平均の約100倍です。
榊 淳(さかき・じゅん)/一休 社長 兼 CEO
1972年熊本県生まれ。慶應義塾大学大学院理工学研究科修了後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。スタンフォード大学大学院修士課程修了。2003年ボストン コンサルティング グループに入社。09年からアリックスパートナーズ。13年一休に入社。副社長COOを経て、16年2月から現職。
そこで、実際に山登りに行きました。頂上でサンプリングをするのです。アミノ酸サプリメントを試してみてどうだったかという手紙をつけて、感想や率直な意見を集めました。