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Salesforceの上位20%の営業がヒアリングしていた項目“SSM”を更にバージョンアップさせました

今回は営業が商談時に抑えておくべき項目について徹底解説していきます。

特に参考になりそうな職種は以下の方々です。

・営業(インサイドセールス含む)
・営業管理職
・営業推進、営業企画系、営業教育系の方
・マーケティング部門の方
・カスタマーサクセス部門の方
・SalesforceやCRMの管理者
・経営者

では、解説していきます。

フェーズ×SSM

以前のnoteで私は、営業の仕事=商談のフェーズを進めることと解説致しました。

もちろん、間違っていません。
フェーズ=顧客の意思決定状況の進み具合で、これをしっかり把握しておきましょうということ。
ただ、これだけでは50点です。その残りの半分が、商談の時に抑えておくべき事項である、SSMなのです。

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このSSMはSelling Success Methodologyの略で、日本語にすると、商談必勝法みたいな感じだと捉えてください。

そして、このフェーズとSSMの関係なのですが、商談や商材によって重要度の比率が変わってきます。

フェーズが重要
→商談期間が短く、単価が安い
→SMB(中小企業)向け
SSMが重要
→商談期間が長く、単価が高い
→エンタープライズ(大企業)向け

ちなみに、このSSMという項目は、売れている営業上位20%にヒアリングをし、「売れている人たちはこんなこと聞いてましたよ〜」という内容を集約したものです。

そして、上位層の思考を全体に浸透させようという考えのもと、営業自身の商談セルフチェック、マネージャによるコーチングやフォーキャスト、教育チームによるトレーニングにも活用されています。

Salesforceという会社が、そもそも様々な会社のトップセールスの集合体で、その中の上位20%なので、世の中的には恐ろしいトップセールス集団の営業たちの脳みその中とでも表現したらよいかと思います。

ちなみに、SSMはゴリッゴリのエンタープライズセールス向けの内容です。

よく使われるフレームワーク

世の中のBtoB営業がよく使うBANTというフレームワークは4項目です。

B=Budget:予算
A=Authority:決済権
N=Needs:ニーズ
T=Timeframe:導入時期

しかし、これだけでは足りません。
優秀な営業ほど小心者で、最悪のパターンを常に想定しています。

このBANT項目だけではまだまだリスクがたくさんあります。

少しレベルの高い営業組織になると、BANTと組み合わせてMEDDICというフレームワークを使う組織が多くなってきます。

個人的にこのMEDDICというフレームワークは6項目で覚えやすいですし、実践的なのでオススメです。

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こちらについては、すでに完璧レベルにまとまったnoteがあるので、
そちらをご参照くださいませ。
(上記画像も引用させていただきました。)

SSMは14項目ある

SSMは14項目あります。
とんでもなく多いです。

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私もSalesforceで営業をしていたので誰よりも分かっています。
全件、この内容全てをヒアリングするなんて無理です。死んでしまいます。

しかし、絶対に受注しなければいけない商談があるのも事実です。一定金額以上とか、絶対に取りに行きたい大企業とか。

その場合はこれら全てを抑えておく必要があります。裏を返せば、これら全てを抑えていない状態で受注しても、それはまぐれ的な要素が入っているということです。

では、少し長くなりますが、この14項目と具体的な記載例を紹介していきます。

①コンペリングイベント

コンペリングイベントって、馴染みのない言葉かもしれませんが、外資系の営業の中ではかなり一般的に使われている言葉で、
お客様がその時期までに購入するべき理由を表しています。

具体的な記載例
→2020年3月末に現行のシステムの保守切れが発生し、それまでにリプレースが必須。
→導入プロジェクトに3ヶ月必要
→12月中に発注が必須

コンペリングイベントは14項目の中でも飛び抜けて重要です。そのため、それだけの解説noteも以前に書いています。

②利用する業務と組織

どの業務に対して、どの組織が利用するのか、
これらを明確にしておかないと、「現場が猛反発」ということも起きたりします。

具体的な記載例
→人事部が新卒の採用管理で利用
→対象人数10名
→部長1名、課長1名、メンバー7名、アシスタント1名

③経営上の優先事項

中期計画など、経営レベルでお客様が実現したいことを記載します。
コンサルチックなことを言うと、バリューピラミッドのかなり上流の方の話です。
そこから問題→課題→解決策まで落としていくイメージです。

これは具体的な記載例を見ていただいたほうがイメージしやすいかと思います。

具体的な記載例
2025年までに売上1兆円、海外比率50%を以上にする
→そのために、グローバルの重要商談とリソースの可視化を目指す
→グローバルCRMの導入を検討

④ROI(費用対効果)

純粋に、システムを導入して、何の業務がどのくらい削減されたかのビフォー・アフターです。
根拠ない記載を絶対にしないのがポイントです。

具体的な記載例
日報作成業務=20分/日→5分/日
対象人数:100人
削減効果:1,500分/日

ここでポイントなのは、営業側が勝手に削減した数字を書かないこと。
「置き換えをしたら今の業務から何分くらい短縮されそうですか?」とお客様に質問し、答えてもらうようにしましょう。

※興味がある方向けに根拠のないROIについて更に詳しく解説してます。

⑤最終意思決定者

これは、MEDDICのEと完全に同義語です。

最終意思決定者で、これは人ではなく役員会などの会議体であることもあります。
先述のnoteにもバッチリ記載があるのでそちらを参照頂きたいのですが、最終意思決定者は拒否権をもっている場合も多いです。
国連安保理の如く、拒否ができます。
なので、大どんでん返しを防ぐためにも商談の早い段階で会いに行くのが大切です。

具体的な記載例
代表取締役社長:鈴木一郎

毎月第1水曜日開催の取締役会(合議制)
etc.

⑥推進者のゴール

ここで言う推進者≒MEDDICのC(Champion)と考えて良いです。

このChampionは出世が強い場合や、事業責任者であることが多いため、それらをしっかり把握しておきましょう。

具体的な記載例
Champion=新規事業部長の斎藤さん
→2020年までに新規事業の売上を20億円にしたい。
→このプロジェクトの成功で役員への昇進の可能性が高まる

⑦レッドフラグ

懸念事項や、製品自体のGAPなどを記載しましょう。
また、レッドフラグに対しての対策をあわせて書いておきましょう。

具体的な記載例
最終意思決定者に会えておらず、Championの斎藤さんの上申が拒否される可能性がある。
→オフィシャルの上申ではなく、非公式での下ネゴを実施頂く。反応が良くない場合は、プレゼンの場をセットしてもらい、我々がプレゼン実施する機会をもらうように調整する。

⑧意思決定の基準

これはMEDDICのDecision Criteriaと同義語です。
何を基準に意思決定を行うかです。

この基準が不明瞭な場合が非常に多いです。
そのため、評価項目の作成に関わることができたらベストです。

そうでない場合は、ベンダー選定する際によく使われる4つの基準というものがあるので、それを参考に確認をしましょう。

会社(財務体質):体力や開発力、安心して付き合える会社かどうか
製品:自社にとってベストな製品か
実績:実績はあるのか、どこが導入しているのか
サポート:使いこなすサポートをしてくれるのか
具体的な記載例
お客様社内に存在する発注基準の優先順位はQCDの順序となっている。
Qについては、導入社数と開発年数を重視。
Cについては、5000万円/年以内
Dについては、3ヶ月以内に稼働可能であること
となっている。

⑨次のステップ

商談で常に更新が求められるのはこの項目です。
エンタープライズセールスでなくてもこの項目は管理必須です。
常に更新され続けます。

だだの「見積もりを提出」ではなく、5W1Hで記載しましょう。

具体的な記載例
12月19日15時に訪問
私から田中部長宛に見積を提示。アポイント取得済み
→20日10時の上申の際に見積価格を添付するため。

※最悪なパターンは、日付項目だけズルズル変更するパターンです。
「16日アポイント打診中→18日アポイント打診中→20日アポイント打診中」

私の失注の定義は、次のステップが更新できなくなることです。
これ、めちゃくちゃ大切です。
次のステップが更新できなくなる=失注です。

ですので、自分自身もそうですし、チームを持たれている管理職の方は、日付だけズルズル変更している次のステップは特に注意してください。

次のステップが更新できなくなる=失注ですからね。

⑩検討スケジュール

これは、MEDDICでいうところの、Decision Processです。
公式な役員会以外にもいろいろなパターンが存在します。

そのため、このザックリした表現では足りないため、後ほど補足します。

具体的な記載例
→別途補足します。

⑪競合優位性

競合にたいしてどの様な優位性があるのかを記載します。
実はこの項目、個人的にあまり好みではありません。
なぜなら、⑧意思決定の基準と重複することが多いからです。

ですので、競合優位性という比較の仕方ではなく、純粋に競合の数と企業を把握できればそれで良いと思っています。

具体的な記載例
→4社競合
・Microsoft
・Oracle
・SAP
・自社

⑫社員同士の繋がり

営業たるもの、利用できるものは全て利用します。
特に、お客様の役員と自社の役員がつながっている場合は大チャンス。
そんな機会を逃さぬよう確認しておきましょう。

具体的な記載例
先方の伊藤専務と、自社の山田執行役は新卒の会社の同期で、仲がいい。
面会以来も可能

⑬予算情報

予算がきっちりと承認されているか確認します。
しかし、この項目では甘いです。
⑩の検討スケジュールと密接に関係していますので、後ほど補足します。

具体的な記載例
→別途補足します。

⑭社内役員スポンサー

何かあった時にケツモチをしてくれる自社の役員です。
表敬訪問やキックオフに参加ももちろん、トラブル発生時の火消しにも参加してもらいます。
いわば、何かあった時に出てきてくれる偉い人です。

商談は一人で取るものではありません。チームで取るものです。ですので、この項目は非常に重要になってきます。

具体的な記載例
大阪支店長 常務執行役員 浦田さん(営業)
大阪支店 シニアディレクター 屋城さん(技術)

SSMをバージョンアップさせる(フェーズに盛り込む)

ここまで14項目、全部読んでいただいた方、ありがとうございます。
非常にボリューミーです。

それでも、私は足りていないと思う部分があります。
それは、⑩の検討スケジュールと、⑬の予算情報です。

先程補足すると申し上げた部分で、あと2つ抑えたら完璧になります。

追加①:Champion

Championとは最終意思決定者に影響力があり、自らもある程度の権限をもっている人です。
SSMの⑥推進者のゴール推進者がChampionにあたります。

Championとは、お客様社内で自分に変わって営業をしてくれる人で、以下の図で表現されます。

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Championではないが、自社に対して好意的で情報をくれる方をCoachと呼びます。

このChampionについては過去に解説済みなので詳細はこちらをどうぞ。

追加②:意思決定プロセス

お客様の意思決定のプロセスを先に把握しておこうということです。

お客様が意思決定のプロセスを行うときは大分して3パターンあります。

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選定プロセス
→主管となる部署が複数製品の比較をする。その上で、「この製品を使いたい」という意思を含めて、上申をすることがほとんどである。
→オフィシャルじゃない会議で決定することが多い。
※Championがここのプロセスのリーダーで有ることが多い
承認プロセス
→最終意思決定者によってGoサインが出るまでの道のり
→誰が稟議書の起案者で、その道中に通過する人が誰か把握しておく必要がある。
※営業がここの部分に関わることは殆どできない。
発注プロセス
→最終意思決定者のGoサインが出たあとは実際に契約書にサインをし、返送するまでのプロセスを把握する必要があり、
→購買や財務による口座開設処理や、法務のリーガルチェック、ITによるセキュリティチェック、環境への取り組みチェックが入ったりする。
※先回りして完了させておくことも可能な場合が多い。

役員会は通ったのに契約書が届かない!!
なんて事があると思いますが、その場合は、ほとんど発注プロセスで引っかかっています。
この発注プロセスですが、長いと数ヶ月かかったりします。しかし、多くの営業は見逃します。気をつけましょう。

また、これらのプロセスに関わる人、それぞれの実行される日時を全て把握できていないと、狙った日時に契約書を取得することなんてできません。

そして、要注意なのが、最終意思決定者と、サイン者は別であるケースも多々あります。

そのため全てのプロセスと人を完全に把握する必要があります。

私がある超大企業にご発注頂いた際は、
これら3つのプロセスを通過する間に40名以上の方が関わられておりました。

私が大型商談を対応するときは、事前に選定、承認、発注プロセスを理解した上で、顧客Championに今後の流れを質問をします。

すると、大枠の流れは教えてもらえるが、不明点が出てきます。
「XXさんのお時間を取らさないために、この件のやり取りを誰としたら良いか教えてもらえませんか?」
と質問し、Championが信頼するCoachを紹介してもらうのです。

そして、そのCoachと全てのプロセスを確認していき、
カレンダーまで落とし込み、
「XX月XX日、YY時に、○○さんが△△さんに稟議書類を持っていく」
「12月17日の14時に本社会議室にて、10人参加(参加者XX,XX・・・)」
まで記載をして行きます。

この出来上がったカレンダーで抜け漏れがないか、
そのスケジュールに対して、オンスケジュールか、遅れがないか、
デイリーレベルで、自分の窓口となるCoachと進捗確認をしていくのです。

実は、ここでCoachは私からの連絡に対して、非常に協力的な姿勢を取ってくれます。

なぜなら、
「Championから依頼されている仕事を、わかりやすく可視化してくれ、サポートをしてくれる人=営業」
の構図になっているからです。

このCoachは、営業が作ったカレンダーを元に、Championに対して進捗報告を行っているのですから・・・

ここまで確実に確認ができていたら、
そのカレンダーで予定されていたMM月DD日hh時きっかりに、あなたの手元に契約書が届いているはずなのです。

ここまでボリュームが多いと、ただの商談のヒアリング1項目として管理することは実質不可能ですし、必ず発生するプロセスなので、フェーズ項目に「意思決定プロセスの確認」という内容を追加したほうが良いと思っております。

一番大切なヒアリングの仕方×Champion×マネージャ

ここまでSSMについて語ってきましたが、本当にいちばん大切なことは何か分かりますか?

この14項目はただ闇雲に聞けば良いものではありません。警察の取り調べのように聞いてもお客様は答えてくれませんし、入社1年目の新人が全てを把握していることもほぼあり得ません。

一番大切なのは、適切な人(Champion)に対して、雰囲気や場をつくりながら、さらっと聞き出すことのできるヒアリングのスキルです。

ただのチェックリストのようにSSMを埋めようとしても埋まらないので、焦らず地に足をつけて営業をしてきましょう!

その上で一人で出来ない、わからないことが出てきます。
その際は、これら全てを完全に熟知したマネージャの出番です。
マネージャはこれらを全て理解し、実践できるスキルを持っている必要がありますし、ない場合はご自身も実践しながら学ばれて成長されることをオススメ致します。

営業は一人で出来ません。

「一人で勝つな、一人で負けるな。」

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