【タスクと自律性】ストレスなく働くために「仕事を自分でコントロール」する
Quartz × NewsPicks Brand Design
2020/07/13
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で私たちはさまざまなストレスを抱えている。あまりのストレスに、気分の落ち込みや恐怖心の原因を解明する気にさえならない人もいるだろう。
だが健康に関する不安や家族の心配、ソーシャル・ディスタンシング(社会的距離の確保)の違和感などのさまざまなストレスの中で間違いなく突出しているのは、仕事に関するストレスではないだろうか。
そんな私たちにとって、まさにタイムリーに思える研究報告が発表された。
「今の仕事が(文字どおり)私たちを殺す」と題された研究報告は、米ノーザンイリノイ大学とインディアナ大学の研究者たちが4月に発表。
20年にわたって、私たちが仕事中に抱く感情と死亡する年齢の間に因果関係があるかどうかを調べ、その結果をまとめたものだ。案の定、研究者たちはある2つの要因、①仕事で強いストレスを感じること、②自分で自分の仕事をあまりコントロールできないことに高い死亡率の間に相関関係があることを発見した。
研究対象となったのは、研究開始時に40代だった人々を中心とする3000人を超えるアメリカ人だ。研究者たちは、MIDUS(アメリカで実施されている中高年者を対象とした大規模縦断調査)がこれらの対象者について異なる3つの時点で行った追跡調査のデータを分析した。
するとストレスが強く、自分であまりコントロールできない(つまり自律性が低い)仕事に就いている人々の方が、よりリスクの低い人々よりも死亡率が43%高いという結果が示された。
研究報告の共著者であるインディアナ大学ケリー・スクール・オブ・ビジネスのエリック・ゴンザレス・ミュール准教授はこの統計値について、衝撃的に思えるが、実際のリスクは「重大だが中程度」だと説明する。
彼によれば、20年にわたる調査が終わるまでに死亡した人は200人程度で、このリスク因子を持つことによる死亡率の増加分(絶対リスク)は6%から8%前後だったということだ。
「調査結果は現実であり、重要な意味を持つ。だが一方で、そうした(強いストレスを伴い、自律性が低い)仕事に就いている人々への実質的な死刑宣告という訳ではない」とゴンザレス・ミュールは言う。
調査期間中に亡くなった人々の死亡原因は、さまざまだった。だが彼によれば、過去の複数の研究でも指摘されてきたとおり、鬱病がリスク要因であることは明らかだ。鬱病を患っていた人々は早死にする可能性が(そうではない人々に比べて)130%(1.3倍)だと彼は言う。強いストレスを伴い、自律性の低い仕事に就いている人々で(調査期間中に)死亡した人々は、鬱病も患っていた可能性が高い。
こうした所見は、仕事のストレスと健康状態の悪化の関連を指摘する、数多くの研究報告と一致する。だがゴンザレス・ミュールは、ストレスを恐れて仕事をやめるべき、というのが自分の結論ではないと説明。重要なのは、従業員の就労体験に影響を及ぼす立場にある人々(たとえば企業のトップや幹部)が、特に強いストレスを伴う仕事に就いている労働者が、これまで以上に自律性を持って仕事ができるように尽力することだと主張した。
自律性の領域/範囲を広げる
仕事のストレスを軽減することが常に可能とは限らない。たとえば作業が込み入っている建設現場で働いたり、救命救急に携わったりする仕事には、本質的に強いストレスが伴う。
だが自律性を高めることは可能な場合がある。ゴンザレス・ミュールによれば、自宅であれカフェであれ、どこで仕事をするかを労働者が自分で選べるようにするのが、その比較的単純なひとつの方法だ。
この点において、Covid-19のパンデミックは進展をもたらした可能性がある。これまでフレキシブルな労働環境の実現に消極的だった雇用主たちが、迅速な対応を取らざるを得なくなり、しかも多くのケースが望ましい結果につながっている。
企業が労働者(特に自宅勤務ができない仕事に就いている人)の自律性を改善できる方法は、ほかにもある。
「自律性はスペクトル(範囲・領域)のようなものと考えていい」とゴンザレス・ミュールは言う。
「労働者に自分のやりたいことを選ばせるのが、高いレベルの自律性。これに対して、単にタスクの優先順位を決めさせて、好きな順番で取り組ませるのが低いレベルの自律性だ」
その意味でかなり高いレベルのテック企業なら、チームやプロジェクトを自由に選ばせることで従業員に自律性をもたらすかもしれない。あまり融通の利かない企業でも、それぞれの従業員に日々の業務や時間についての選択権を与えることはできるだろう。それが従業員のウェルビーイング(幸福感)に大きな変化をもたらし得るのだ。
「ずっと前から分かっているのは、一般に人は自律性や自主性を与えられるのが好きだということだ。その方が、満足感が高まる傾向にあるし、生産性もより高まる。誰かに指図されるのではなく、自分の好きなやり方で行動できることは、人間にとって必要なことなのだ」
研究ではまた、認知機能が低くストレスが強い状態と高い死亡率の間にも相関関係があることが分かった。
興味深いことに、強いストレスを伴う仕事に就いているが、仕事の自主性・自律性が高い人は、ストレスの低い仕事に就いている人々よりも長生きする可能性が高く、より良好な健康状態を維持できるようだということも分かった。
研究者たちはそのひとつの理由として、仕事の自律性が高いから、仕事がきつくても、平行してエクササイズや屋外で過ごす時間、リラックスして過ごす時間を組み込んで、より健康で幸福感を得られる生活を実現できるからではないかと推測している。
元の記事はこちら(英語)。
(執筆:Cassie Werber、翻訳:森美歩、写真:月森恭助)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with HP.
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