【シバタアキラ】仲間の拒絶、創業した会社から自分が去る絶望

2020/7/9
急成長を遂げる米ベンチャーDataRobotの日本担当チーフデータサイエンティストとして「AIの民主化」を推し進めるシバタアキラ氏。
そのミッションをつかむまでのキャリアは異色だ。高校を中退し、ミュージシャンに憧れた10代を経て、ロンドン大学とニューヨーク大学で素粒子の先端研究に従事。ボストン コンサルティング グループに転じた後に起業。「絶望の時」を経て天職に出会った。
高速で成長を続けるシバタ氏の思考と哲学を追う。(全7回)

BCGコンサルタントの経験

ボストン コンサルティング グループ(BCG)では、小売りやIT、製薬、電機メーカーなどの大企業の経営戦略案件に携わりました。
データ分析を駆使した提案ができるコンサルタントとして、少しは貢献できたのではないかと思います。
シバタアキラ/DataRobot チーフデータサイエンティスト、物理学博士
高校中退。ピザ屋でフリーターをした後、パンクロックに憧れて渡英。ロンドン大学でプログラミングに目覚め、高エネルギー物理学博士課程修了。ニューヨーク大学でのポストドクター研究員時代に加速器データの統計モデル構築を手掛け、「神の素粒子」といわれるヒッグスボゾン発見に貢献。その後、ボストン コンサルティング グループで戦略コンサルティングに従事。AIニュースキュレーションアプリ「カメリオ」を提供する白ヤギコーポレーションの創業者兼CEO(最高経営責任者)を経て、2015年にDataRobot Japanの立ち上げに加わる。
例えば、テレビショッピングも手がけるECサイトの案件を手掛けたときには、テレビショッピングにおける消費者の購買行動とネットショッピングにおけるそれの相関関係を分析して、クライアントへの提案に反映させました。
テレビとネットのどちらでも買う客の購買金額が高いことは明らかであったとしても、「両方で買うからたくさん買ってくれる」のか「たくさん買ってくれる人が両方で買う」のか、その因果関係を曖昧なまま戦略を練っているケースはよくみられます。
データサイエンスをビジネスに掛け合わせることで、数字と数字の関係性をより正確に判定することが可能になり、他の手段では得られない知見にもつながります。
データサイエンスを駆使して、現実社会で今必要とされている課題解決に生かせることには、大きなモチベーションを感じました。

サイエンスと実世界をつなぐ

研究も好きでしたが、ラボで明らかになる研究成果が実際に世の中に役立つまでにはどうしても時間がかかることがジレンマでした。
コンピューターの世界では「いつでも、誰でも、すぐに」技術の進化を享受できる仕組みがどんどん生まれているのに、サイエンスと実世界がつながる時間差にギャップがある。このギャップを埋めることが、その両方を知る自分の使命だと思うようになってきました。
今でも、「サイエンスを実装する」というテーマの追求は続いています。