米、専門職など一部就労ビザ発給停止へ 米国民の雇用確保狙い
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よく「CEOはインドの最大の輸出品」と言われます。大前研一氏も以前「『 Fortune Global 500 』をみると、副社長以上にインド人のいない会社を見つけるほうが難しい」とコメントしていました。アメリカ経済の深部は、インド人を始めとした海外からの優秀な人材、多様なバックグラウンドを持つ人材によって支えられてきたわけです。にも関わらず、その人たち排除するというのは、自ら成長を放棄するようなものだと思います。
H1B、L1、J1全部発給停止ですか。ロックダウンでいずれにせよ人の往来が減っているタイミングに合わせて、ポピュリズムを煽る施策に出たというところでしょうか。私自身、former H1B Visa holderなので、複雑な心境です。グローバルな人材マーケットに影響がありそうです。
背景を理解する必要があります。H1Bビザの「乱用禁止」はトランプ氏の選挙公約です。というよりも、その話題からメディアに取り上げられ、多くの有権者の支持を得る事になりました。当時、経費削減のため自社のIT部署をカットし、アウトソースする米企業が増えていました。最も有名な話はディズニー社による250名の正社員解雇です。アウトソースといっても、外国人労働者が社内にきて作業をするわけで、しかも従業員への退職金の交換条件として提示されたのが、外国人労働者へのトレーニングです。これをメディアが大体的に報道し、それにチャンスを見出したのがトランプ陣営です。以下2015年のNYタイムズの記事ですが、『ディズニーで解雇通知、その前に外国人労働者のトレーニングを』という見出しです。
https://www.nytimes.com/2015/06/04/us/last-task-after-layoff-at-disney-train-foreign-replacements.html
世間の人がH1Bという単語さえ聞いたことがない時に、トランプ氏は当時まだ小規模だった各地の集会で、「乱用」を野放しにしたオバマ政権を批判したわけです。どこの国にもよくあるポピュリズムですが、実際、従業員には家のローンもあり、子供の学費も積み立てないといけません。それがいきなり首です。このような従業員の生活を無視したアウトソースは、1990年代後半のクリントン時代のITバブル期から、現政権下で規制が厳しくなる前のオバマ政権まで約20年間続きます。
同様にクリントン政権のNAFTA貿易条約も米国雇用を生むという宣伝でしたが、実際は多くの企業がメキシコに工場を移しました。今になってバイデン元副大統領は、自身のNAFTA支持は間違いだったと認めていますが、賃金が10分の1ぐらいで厳しい環境規制がない国に工場が移転することは誰でも想像できたわけです。それが原因で医療保険を失った家族も少なくありませんが、その間の救済措置は高額な保険を強制的に買わされるオバマケアです。その反動もあり、国民皆保険を公約にしたのがバーニー・サンダース氏、工場をアメリカに戻すと約束したのはトランプ氏です。事実トランプ氏はNAFTAを再交渉しました。今回のビザ制限は、正当化されるべきではないですが、もとを正せばそういう話です。