【最新】10年後の倉庫、自動化はこう進化する

2020/6/23
コロナ禍で、一時は入手困難になったマスクとトイレットペーパー。
マスクは生産の多くを中国に依存していたのが要因だったが、トイレットペーパーは国内生産が中心で、しかも生産力に不足はなかった。
では、なぜ入手困難になったのか。
アキレス腱は物流だった。「作れても、届けられない」課題が今回、浮き彫りになったのだ。
コロナ禍でeコマースの利用はさらに増えている一方、物流が止まる懸念も高まっている。
こうした環境で、新しい物流の姿が見えつつある。今回は物流改革を担う、2つの日本企業にスポットを当てる。
1社目が、アスクルと楽天の物流部門を担ってきた宮田啓友CEO(最高代表責任者)が2015年に創業した物流テック企業のGROUND(グラウンド)だ。
インド発の物流ロボット「バトラー」をニトリや、大和ハウス工業などに納めてきた。
そしてその宮田氏が、世界でも例を見ない物流システムを導入しているというのが、専門商社のトラスコ中山だ。
トラスコ中山は、電動工具や台車、作業用手袋などプロツール(工業資材)を国内外2500社超から調達し、全国5500社の販売店に届けている。ものづくりを支える黒子企業だ。
「アフターコロナ」時代に、物流はどのように変化するのか。両社の取り組みから、未来の物流を探ってみた。

人とロボットの「役割分担」

「なぜ物流業界はここまで合理化が遅れているのですか?」
グラウンドCEOの宮田氏は、5年前の創業以来、そうした声をたびたび耳にしてきた。
製造業はロボット導入で合理化が進んでいるのに対し、物流業界は人手に依存する昔ながらのやり方のままだというのだ。
宮田啓友(みやた・ひらとも)。グラウンド創業者/CEO。1996年三和銀行入行、2000年デロイトトーマツコンサルティング(現アビームコンサルティング)入社。2004年アスクル入社、2007年楽天入社、2010年楽天物流社長、2012年楽天執行役員物流事業長。2015年グラウンド設立。
その理由の一つとして宮田氏は、物流センターが扱う品目の多さを挙げている。
例えば、オフィス用品であれば、ボールペンのような小物の必要品もあれば、会議用の机など大型家具もある。
物流センターにはこうした大きさも形もばらばらの商品が混在するため変数が多く、それに対応したロボットがほとんどなかった。
製造業が、同じものだけを大量に作るベルトコンベアラインを導入するようにはいかないのだ。
「向こう10年、物流の全自動化はできない」
ジェフ・ベゾス氏率いるアマゾンも2019年5月、そうした見通しを発表している。
物流倉庫の効率化に巨額の投資を続けるアマゾンのこの言葉からも、いかに全自動化のハードルが高いかがわかるだろう。