【山口 周】都市化はダサいトレンドだ。直感に従って移住しよう

2020/6/26
東京・世田谷から神奈川県葉山町に移住した山口周氏。
それはビフォーコロナのテレワークが普及する以前のことだ。
いったい何が都心から郊外へと向かわせたのか。
4年に1回の頻度で引っ越すという山口氏が独自の「住まい選び」と「移住」について語った。

都市化はダサいトレンド

━━山口周さんが東京から神奈川県葉山町に移住したのはいつですか。
5年前の2015年です。
━━いま、リモートワークが普及し、都心のオフィスに通う頻度が減ってきたため、都心を離れて郊外に移住したいというニーズが高まっています。この傾向を、先んじて移住した山口さんはどう見ていますか。
僕はここ20年ほど、世の中のいろいろなトレンドを見てきました。
こういう変化が起こっているんだろうと仮説を立てて、それを実際に数字で確認し、大体こっちの方向に行くだろうなと思った通りに世の中が動いてきたのですが、唯一、おかしいなと思ったトレンドがあります。
それはアーバナイゼーション、つまり都市化が世界的に進んでいるということです。
(写真:CHUNYIP WONG/iStock)
これはリンダ・グラットンの『ワーク・シフト』に書いてあります。都市化が非常に進んだ世界として2025年を描いており、人々は都市に住むことが前提になっている。
僕は『ワーク・シフト』の中身はたいがい共感するのですが、都市化については違和感がありました。
この先、ずっと続くのだとすると、相当ダサいトレンドだなと。

インターネットは距離をなくす

僕は別に「自然に帰れ」とかルソー(※編集部注:18世紀に活躍したフランスの哲学者)みたいなことを言うつもりは全然ありません。
ただ、本来であれば、インターネットの登場によって、人を物理的に都市に集約するニーズは減っているはずなんです。
インターネットというものは、物理的な距離をなくすテクノロジーなわけで、遠くに離れている人でも、かなり濃密に情報のやりとりができるようになってきています。テクノロジーのトレンドから考えると、都市に集まる理由はどんどんなくなっている。
都市は郊外に比べて物価が高いし、土地も高い。土地が高いということは家も狭い。環境もよくないし、ストレスを抱えて病気になる人が多いのは統計的に分かっているのに、そういうところにわざわざ人が集まっている。
(写真:JulieanneBirch/iStock)

わざわざ集まって仮想空間に入る?

分かりやすく、製造業に例えましょう。
普通、製造業は工場でモノを生産する場合、工場を動かさないで、原材料を動かすでしょう?
僕たちホワイトカラーの仕事って、情報の製造業なんですよ。脳が工場で、情報が原材料。それなのに毎朝毎朝、脳という工場を都市に動かして出勤している。情報という原材料は動かさずに。
情報を簡単に動かしてやりとりできるインターネットが出てきて久しいにも関わらず、ある種、18世紀頃の働き方を続けている。ものすごく非効率的なことを社会的にやっているわけです。
しかも、会社に行ってみんなまず何をやるかというと、机の上のコンピューターを立ち上げてメールを開くわけです。わざわざ物理的に都市に集まって、仮想空間に入って情報をやりとりしている。
(写真:Tzido/iStock)
いったい何をやっているんだ、都市化ってよく分からないトレンドだな、正直、不可解だという気持ちはずっとありました。

東京で家を建てるのは高すぎる

━━それがコロナによって変わりつつあります。山口さんが東京から葉山に移住しようと考えたきっかけは何だったのですか。