[ワシントン 18日 ロイター] - 米民主党のペロシ下院議長は18日、近く出版が予定されるボルトン前大統領補佐官(国家安全保障担当)によるトランプ政権の暴露本の内容を巡り、ボルトン氏を召喚するかどうか党内で検討しているとした上で「トランプ氏は倫理的に米国の大統領にふさわしくなく、知性も備わっていない」と述べた。

ボルトン氏は18日放映されたABCニュースとのインタビューで「トランプ氏はホワイトハウスにふさわしくない」と言明。「再選に何が有利であるかどうか以外に、私が理解できる基本理念は何もなかった」と語った。

民主党のペロシ下院議長だけでなく、保守強硬派のボルトン氏からも米国大統領にふさわしくないと断言されたトランプ氏。ボルトン氏が暴露本を巡り議会で証言すれば、大統領選が迫る中、トランプ氏の資質が再び問われることになりかねない。

昨年末から年初にかけたウクライナ疑惑を巡るトランプ大統領の弾劾で、ボルトン氏は下院による弾劾調査での証言を拒否。上院の弾劾裁判では証言する意向を示していたが、同氏の招致は共和党によって否決された。

弾劾調査を主導した下院情報委員会のシフ委員長は、ボルトン氏が著書のために調査時に情報を公表しなかったことは愛国心に欠く行為と批判。「われわれは引き続きトランプ大統領の責任を追及し、職権乱用や汚職を明らかにする。数日中に下院議長ら幹部と次のステップについて協議する」と述べた。

一方、共和党の上院議員は18日、ボルトン氏を上院で証言させるべきだったとの批判を受け入れず、ボルトン氏の主張へのコメントを差し控えた。

下院の共和党トップ、ケビン・マッカーシー院内総務は、ボルトン氏が著書を売るために「センセーショナルな」主張を展開していると述べた。

ボルトン氏著書の抜粋からはこれまでに、トランプ大統領が昨年6月に中国の習近平国家主席と会談した際、自身の再選の支援を要請していたことなどが明るみに出ている。さらに抜粋によると、ボルトン氏は大統領弾劾調査について「トランプ氏の外交政策全般にわたってもっと時間をかけて組織的に調べていれば、弾劾裁判の結果は違ったものになっていた可能性は十分にあった」と主張している。[nL4N2DU4CU]

ボルトン氏は著書で、2018年の米朝首脳会談中にポンペオ米国務長官からトランプ氏をののしるメモを受け取っていたことも暴露。

ポンペオ長官は18日の声明で、この件には触れないまま、ボルトン氏は嘘を並べ立てていると非難。「ボルトン氏の最後の公務が米国を傷つける裏切り行為となることは残念であり、危険だ」とした。

また、トランプ政権は中国政府によるウイグル族などイスラム教少数民族の弾圧を強く批判してきたが、暴露本によると、トランプ氏は習氏との昨年6月の会談では中国の政策を容認したという。

民主党上院トップのシューマー院内総務は、暴露本の内容は、中国の新型コロナウイルス流行への対応を当初称賛し、中国の人権侵害には沈黙を続けるといったトランプ氏の中国への姿勢を説明するものだと発言。「トランプ大統領にはもはや対中政策を任せられない」と語った。

一方、ナバロ大統領補佐官(通商製造政策局長)は、トランプ氏が中国が米国から農作物を購入することで自身の再選を支援するよう習氏に求めたとするボルトン氏の主張を否定。「そんな話は聞いていない。ボルトン氏の描写は私の捉え方と違う」と記者団に語った。

トランプ氏は暴露本は「嘘の寄せ集め」だとして内容を否定している。

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