コロンブス、リンカーン、ガンディー像も……黒人差別の象徴破壊、世界で相次ぐ

Leila Navidi / Star Tribune via AP

 BLM(Black Lives Matter、黒人の命は大切)の抗議活動が続いているが、これに伴い、各地で奴隷制度や黒人差別に加担したとされる歴史上の人物の銅像や記念碑が破壊されている。倒される前に急いで撤去する動きもあるが、物議を醸す過去の遺物として再評価が求められている。

◆歴史上の人物像ご難 怒りは世界に拡散
 米ABCニュースによれば、アメリカで標的となっているのは、おもに奴隷制度廃止に抵抗していた南部連合時代の英雄像だ。19世紀の白人至上主義を強調するものとされ、これまでもしばしば議論の的になってきた。6月12日時点で8都市がこれらの銅像の撤去、または撤去を承認しており、大学や企業にも、同様の動きが広がっている。

 歴史家のエリン・L・トンプソン氏は、2018年の調査で、南軍の像や記念碑には過去10年で4000万ドル(約43億円)の税金が投入されたことがわかったとする。対照的に、黒人やネイティブアメリカンの歴史遺産は資金不足などで消えつつあると指摘し、扱いが不公平であることを示唆している(ニューヨーク・タイムズ紙、以下NYT)

 植民地主義に関連のあるクリストファー・コロンブス像も、ボストン、バージニア州リッチモンド、ミネソタ州セントポールで破壊された。イギリスのブリストルでは、奴隷貿易で財を成した篤志家、エドワード・コルストンの像が海に投げ込まれ、オーストラリアのシドニーでは英国人探検家ジェームズ・クックの像が落書きの被害にあっている。ベルギーのアントワープでは、植民地支配で多くの黒人の命を奪ったとされるレオポルド二世の像に火が放たれ、市が像を博物館に撤去した。そのほかにも、エイブラハム・リンカーン、ウィンストン・チャーチル、マハトマ・ガンジーの像が人種差別と結びつけられ、各地で被害を受けている。

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Text by 山川 真智子