[17日 ロイター] - 米株式市場では、予想を大幅に上回る経済指標が相次いでいることを受けて、V字型回復への期待が広がっている。株価はここ数カ月で急上昇しているが、高値警戒感は強まっていないようだ。

経済指標の実績値と市場予想のずれを指数化したシティグループの「エコノミック・サプライズ指数」<.CESIUSD>は今月、過去最高を記録した。雇用などの重要分野で指標が改善しており、S&P総合500種指数は3月下旬以降40%値上がりしている。

16日も5月の小売売上高が過去最高の増加となり、S&P総合500種指数は1.9%値上がりした。

経済指標の改善に加え、米連邦準備理事会(FRB)も景気の下支えを継続する意向を示しており、最近の株高は新型コロナウイルスの流行で疲弊した国内経済の実態を無視しているとの懸念は和らいでいる。

OANDAのシニア・マーケット・アナリスト、エドワード・モヤ氏は「パウエルFRB議長が整備した安全網は、当面維持されるだろう」とし「厳しい経済情勢は続くだろうが、ありとあらゆる市場支援策が導入されており、長期にわたって株価の下落が続く可能性は低い」と述べた。

確かに、これ以上の大幅な株高は見込めないと指摘する投資家は少なくない。米国の一部の州では新型コロナ感染症の患者が再び増加。中国でも新たな集団感染が発生している。原油など商品需要も低迷しており、世界経済の急激な回復は実現しない可能性がある。

デビッド・テッパー氏やスタンリー・ドラッケンミラー氏など米国の著名投資家は先月、市場は割高で、リスクとリターンのバランスがひどく悪いと発言。ドラッケンミラー氏はV字回復への期待は「幻想」だと一蹴した。

それでも、市場ではこうした悲観論が後退し、楽観論が強まっている。BofAグローバル・リサーチの調査によると、足元の株価上昇をベアマーケットラリー(弱気相場での一時的上昇)と考えている投資家は先月、全体の3分の2を超えていたが、今月は全体の半数強に減少している。

ドイチェ・バンク・セキュリティーズのチーフエコノミスト、トルステン・スロック氏は「強気が強気を呼ぶ展開だ。ベアマーケットラリーではなく、長期的な株高だとの見方が広がり始めている」と述べた。

これまで様子見に回っていた投資家も、株高の進行を受けて資金を株式市場に投じているようだ。BofAの調査によると、ファンドマネジャーが保有するキャッシュの水準は6月に過去10年あまりで最大の減少を記録。ヘッジファンドの株式へのネットエクスポージャーも5月の34%から52%に上昇している。

リッパーの週間調査(6月10日までの週)によると、株式ミューチュアルファンドへの資金純流入額は204億ドルと、2007年以降で最高となった。

一部の投資家は株高の進行に警戒を強めている。特にS&P総合500種指数の株価予想収益率(予想PER)は22倍と、20年前のドット・コム・バブル以来の高水準となっている。

テミス・トレーディングのトレーディング部門共同マネジャー、ジョー・サルッジ氏は「まだ愛憎が入り交じっている状況だ」とし「ファンドマネジャーであれば、ベンチマークを上回る運用成績を残さなければならず、市場に参加する必要がある。多くのファンドマネジャーが市場に参加し、運用成績の向上を目指している」と述べた。

一方、原油などの商品価格は、ここ数週間伸び悩んでおり、原材料需要の低迷は世界経済の回復ペースが鈍いことを示しているのではないかとの懸念が強まっている。

経済協力開発機構(OCED)は、新型コロナの感染第2波が起きた場合、今年の世界経済が7.6%のマイナス成長になると予測した。

それでも、投資家が強気の姿勢を維持している形跡はある。S&P総合500種指数のプットオプションを購入する投資家に対するコールオプションを買う投資家の比率は先週、急上昇しており、一部の投資家が株高の継続を予想していることがうかがえる。